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関市池尻に建つ円空入定の記念碑・入定塚
寺院には所属せず、旅の中で人々と触れ合いながら修行を重ねた円空。
北海道から近畿にかけてその足跡が残されていますが、
晩年は出生地である美濃国(現在の岐阜県)に戻り現在の岐阜県関市で入定を遂げました。
旅の始まりであり終わりの地である岐阜県内には円空ゆかりの史跡や逸話が多く残され、
現在確認されている円空仏約5,000体のうち、1,300体以上が岐阜県内で守り伝えられてきたもの。
その数の多さはもちろん、最初期から晩年までの作品が揃っているため、
岐阜を巡れば円空仏の魅力を隅々まで味わうことができます。
円空上人画像(千光寺蔵)
長谷川 公茂さんはせがわ まさしげ
円空学会顧問。全国の円空仏を見て歩き、調査研究している。
円空に関する著書多数。
大下 大圓さんおおした だいえん
飛騨千光寺住職。
現在は住職のかたわら京都大学大学院、名古屋大学医学部などで教鞭をとる。
円空が仏像を彫るきっかけとなったできごとは?
円空が7歳のとき、お母さまを亡くして菩提を弔うために仏教を勉強し始めました。非常に厳しい修業をし、すべての人が平等に救われるのだという悟りを開いたと言われています。そして、困っている人を救うために仏像を彫り始めました。
円空が彫った仏像は何体?
12万体もの仏像を彫ったと言われています。はじめの頃は丁寧に「仏様らしく」彫っていました。初期の仏像には背中も土台も彫られています。しかし、多くの苦しんでいる人たちと出会うことによって、「時間をかけて彫る」よりも、「たくさん彫る」ほうが、より多くの人を救えるという考え方に変わり、作風も簡素なものに変化していきました。背面が彫られていない円空仏が多い理由がここにあります。
円空仏を拝観するときに心がけたいことは?
円空仏はお金持ちの豪族から依頼されて作った芸術作品ではありません。円空自ら苦しむ人々のために彫った贈り物です。ただ、眺めているだけではなく、対話をしてみてください。円空が語りかけてくると思いますよ。円空仏を展示している施設の中には、円空仏のそばに座るところが準備されているところもあります。ぜひ、円空とゆっくり対話してみてください。
円空仏の特長はなに?
何といっても、「微笑み」の表情が有名ですが、怒りの表情をした仏像にも、円空らしい多彩な表情が表れていて魅力的です。また、鉈(なた)や鑿(のみ)を大胆に使って削り出し、型にとらわれない技法で仏像としての造形美を見事に表現していますよ。
今、円空仏が人気の理由は?
ストレスの多い現代人にとって「円空仏のやわらかい微笑みを見ると癒される!」と評判です。外見だけの迫力ではなく、内面から湧き上がってくる力強さによって、心が耕される感じを受けてほしいですね。
円空を訪ねる旅を楽しむ秘訣は?
旅を通して「非日常」を味わってほしい。ただ円空仏を見学するのではなく、円空が暮らした環境や自然の風景を一緒に見て、体感して欲しいですね。「どんなところで彫っていたんだろう?」と想像を膨らませることも旅の大事な要素だと思いますから。
円空が滞在して仏像を彫り出したとされる古刹
飛騨千光寺 円空仏寺宝館
円空ゆかりの寺として名高い飛騨千光寺。64体の円空仏や書画、歌集などが納められています。円空が54歳の頃、当時の住職と意気投合し、数年間滞在。その間に仁王門近くに生えていた2本の立木に「仁王像」を彫ったというエピソードが残っています。現在は風雨にさらされて傷みが激しくなったため「円空仏寺宝館」に安置されています。また、唯一現存する肖像画も観ることができるのでぜひ一度、立ち寄ってみてください。
<施設で鑑賞できる円空仏>
●千光寺を開山した飛騨の豪族
「両面宿儺像」
●患部に相当する部分をさすると
病気が治るとされる「賓頭盧尊者像」
円空の筆跡が記された仏像が鑑賞できる施設
下呂温泉合掌村 円空館
下呂温泉合掌村は白川郷などから移築した合掌造り集落によって日本の原風景を体感できる観光施設です。施設内にある円空館には下呂市に残る約30体の円空仏を展示。中でも立山の神を形にした「立山大明神像」は必見!仏像の背面に記された円空の筆跡をしっかりと確認することができ、円空の息遣いを現代に伝えています。
<施設で鑑賞できる円空仏>
●穏やかな表情が特徴的な
「地蔵大菩薩像」
●円空の筆跡が背面に残っている
「青面金剛神像」
<近くの立ち寄りスポット>
●注目のパワースポット
「金山巨石群 岩屋岩蔭遺跡」
●温泉を科学と文化の両面から紹介する「下呂発温泉博物館」
初期から晩年までの、さまざまな円空仏に出会える
美並ふるさと館
美並ふるさと館には初期から晩年期にかけて彫られた円空仏約95体を年代順に展示。作風がどのように移り変わって行くのかがよくわかります。また、美並IC近くにある「日本まん真ん中センター」内には「円空研究センター」があり、あわせて見学すると、円空への理解を一層深めることができます。
<施設で鑑賞できる円空仏>
●威厳に満ちた像容が印象的な
「八面荒神像」
●穏やかな微笑みをたたえた
「薬師如来像」
<近くの立ち寄りスポット>
●円空の足跡をたどる
「円空研究センター」
●長良川鉄道「みなみ子宝温泉」駅に
併設された
「日本まん真ん中温泉 子宝の湯」
円空が最後に彫ったとされる円空仏を展示
関市洞戸円空記念館
古来より山岳信仰の拠点として知られた高賀神社。円空が修行僧としてこの地をたびたび訪れ、最後の仏像を彫った地として有名です。関市洞戸円空記念館では円空仏約30体を鑑賞することができ、円空最後の作と言われる「歓喜天像」には、仏像の台座に入定(※)への決意と見られる「釜且入定也」の文字が刻まれています。
(※入定とは高僧・聖者が亡くなることを意味します。)
<施設で鑑賞できる円空仏>
●円空最後の作と言われる「歓喜天像」
●一本の木から作られた大作・一木造三像「十一面観音・善女龍王・善財童子」
<近くの立ち寄りスポット>
●関市板取にある絵画のように美しい
「モネの池」
●郷土色豊かなお土産が揃う
「道の駅 ラステンほらど」
円空のお墓や入定塚を同時に訪問できる施設
関市円空館
関市円空館周辺は史跡公園となっており、円空が晩年を過ごした弥勒寺や円空のお墓、円空入定塚が点在しています。円空を訪ねる旅には欠かせないスポット。館内には隣接する池尻白山神社をはじめ関市内の寺社などに伝えられてきた円空仏を約30体展示。自刻像ともいわれている「善財童子像」の微笑みは安らかな気持ちを誘います。
<施設で鑑賞できる円空仏>
●洪水で阿弥陀寺に流れ着いたとされる「聖観世音菩薩像」
●円空自身を彫ったとされる
「善財童子像」
母の三十三回忌の供養として建てられたお堂
中観音堂(羽島円空資料館)
中観音堂は円空が幼い頃に亡くした母を供養するために建てられたと言われています。本尊の「十一面観音像」とともに、同じ材木から作られた計17体の円空仏を安置。これらの像はいずれも表面がなめらかに彫られていて、円空初期の作品の特徴が現われています。隣には資料館が併設されており、また、お堂の近くには「円空上人の産湯に使われた井戸」が残っています。
<施設で鑑賞できる円空仏>
●母の供養のために彫った
「十一面観音像」
●十一面観音像と同じ材木で作られた
「聖徳太子像」
<近くの立ち寄りスポット>
●9体の円空仏を拝観できる
「長間薬師寺」
●歴史に触れ、昔懐かしい映画に出会える
「羽島市歴史民俗資料館・羽島市映画
資料館」