ぎふの旅ガイド

新緑が目に鮮やかな飛騨の山々に抱かれた久々野町。その中心を悠々と流れる飛騨川の上空では、今年もまた、約百匹ものこいのぼりが春風を受け、大空を舞台に優雅な舞を繰り広げています。鮮やかな緋鯉や真鯉、そして様々な色合いの子供たちが、まるで生きているかのように、時に力強く、時にたおやかに空を泳ぐ姿は、見る者の心を晴れやかにします。

この心温まる光景は、平成元年から続く久須母（くすも）地区の恒例行事として、地元の人々に大切に育まれてきました。もともとは、端午の節句を盛り上げようという地元の方々のささやかな願いから始まったこの取り組みは、高山市との合併を経て「新高山市100景」にも選ばれる、春の久々野を代表する風物詩へと成長しました。

空を彩るこいのぼりたちは、飛騨地域のご家庭で大切にされてきたものばかり。役目を終え、眠っていたこいのぼりたちは、町内会の皆さんの手によって丁寧に修繕され、再び大空を舞う機会を得ます。一針一針に込められた地域の人々の温かい思いが、この風景をより一層、かけがえのないものにしています。

掲揚期間中には、市内の保育園の子供たちの歓声や、介護施設の利用者の方々の穏やかな笑顔が、この場所を包み込みます。色とりどりのこいのぼりが青空を彩る様子は、訪れる人々に元気と安らぎを与え、春の喜びを分かち合う、そんな心和むひとときを演出しています。久須母橋の上から見上げるこいのぼりの群れは、単なる飾りではなく、地域の人々の繋がりと、未来への希望を象徴するかのようです。