岐阜提灯 まちの魅力にいざなうあかり

現代でも盆や祭りなどでよく見られる提灯(ちょうちん)。岐阜は提灯の材料である竹と和紙に恵まれ、江戸時代から提灯の一大産地として名を馳せました。今もその高い技術力を受け継ぎ、世界に魅力を発信する「ジャパン・ランタン・インダストリー」代表の山下章さんを訪ね、やさしい灯りをもたらしてくれる岐阜提灯について教えていただきました。

<この記事は、(株)岐阜新聞社と岐阜県観光連盟との共同企画で制作しました。>

訪ねた人:山下章さん
岐阜市出身。大学進学を機に県外へ出たのちに、地元に戻って岐阜提灯に携わるように。自身も職人として制作する中で「ジャパン・ランタン・インダストリー」を立ち上げ、岐阜提灯をさらに広めようと体験教室を開催。海外でのイベントにも積極的に参加する。
岐阜提灯 まちの魅力にいざなうあかり

全国で親しまれる岐阜提灯

和紙に包まれふくらんだ火袋(ひぶくろ)から、やわらかな光をもたらす提灯は、そこにあるだけで上品な“和”の空間を生み出してくれます。昔から夜の祭りをやさしく照らし、お盆には故人が現世へ訪れるための道しるべとして役割を果たしてきました。

 岐阜で盛んに提灯が作られ始めたのは、広く庶民にも提灯が使われ出した江戸中期ごろです。素材にも恵まれた岐阜の提灯は、1950年代ごろになると全国シェア8割に。現在も出荷額で全国1位を誇ります。

 山下さんは職人として活躍する一方、岐阜提灯の絵付け体験を開催。ときには海外にも赴いて、その魅力を広く発信しています。

清流長良川が育んだ竹と美濃和紙

岐阜提灯を生み出したのは、長良川の河川敷に育つ良質な竹と、薄くて高品質な美濃和紙でした。

「長良川沿いの竹は太くてしなりがあり、節が少ない。提灯に使う竹ひごにぴったりです」。

「日本三大清流」の一つである長良川は、郡上市にある白山連峰の大日ケ岳を水源とし、南へ美濃市、関市、岐阜市と流れ、伊勢湾へ注ぎます。流域一帯に豊かな自然を育み、人びとに恩恵をもたらしてきました。美濃市の美濃和紙、関市の刃物、岐阜市の岐阜提灯や岐阜和傘などは、どれも長良川の豊富で清らかな水があって生まれた文化。

「すべて長良川があったからこそできたこと。これだけ良い材料がそろっているのは、長良川流域くらいしかありません」。

職人の手から繰り出される繊細な技

提灯づくりは、細かな作業の連続です。細かい溝に沿って、細いひごを均等にらせん状に巻いていき、巻き終えると全体にのりを付け、薄い和紙を張ります。形を整えたら、火袋の完成。

絵柄を描くのは、和紙をひごに張り付ける前に、型紙を使って色を摺(す)り込む技法と、無地の火袋に手描きする技法の二つ。ひごの凹凸や、光を灯したときの透け具合などを考えながら、同じ絵柄をいくつもの提灯に描いていくのは、相当な技術が必要です。

かつては火袋が出来上がるまでに約10人もの職人が携わったとか。それほど緻密で、専門的な技術が求められたのです。

伝統と美しさを真摯に守る

「火袋を美しく仕上げられるかどうかで、提灯の出来を左右します。ひご巻きは、きつすぎると一部が窪んでしまい、緩すぎても形が整わない。その加減はすごく難しいですね」。

今では需要の減少も進んでしまい、火袋一つに以前のように何人もの職人を投入することはできません。絵付けの手前までの火袋づくりは、1人で担うことが多いといいます。

「1工程ずつ、とにかく丁寧に、慎重に」。

1人で作るとしても、一つひとつに真摯に向き合い、高い技術とその品格を落とすことはありません。

世界にひとつ。自分だけの提灯づくり

山下さんが代表を務める「ジャパン・ランタン・インダストリー」では、火袋まで出来上がった取っ手付きの提灯に、好きなデザインを描ける絵付け体験が人気です。

「『世界にひとつだけのオリジナル提灯ができるよ』と言うと、子どもたちも喜んで描いてくれます。『提灯ってかっこいいね!』なんて言われると、やっぱりうれしいですね」。

ひごを巻くところからの体験もあり、ものづくりが好きな大人も夢中になって、職人気分を味わうことができます。

提灯を世界に。新風が伝統をつなぐ

山下さんは、現代の生活に合った提灯の新しい魅力を伝えていきたいと考えています。

伝統では草花の色彩画が一般的ですが、山下さんが作る提灯は火袋の部分が和紙と絹との二重になっていて、内側の和紙に白川郷の風景、外側の絹には桜吹雪が描かれています。絹に描かれた白川郷が薄い和紙に透けて映り、まるで白川郷に春がやってきたような美しい一場面が描かれています。

「提灯というとつい仏具として見られがちだけど、これなら一気におしゃれなインテリアになる。技術はそのままに、今の暮らしに合わせた工夫をして、提灯の魅力に気づいてくれる人が増えたらと思います」。

山下さんたちの作るインテリアとしての提灯は、フランスなど海外でも人気が高まっています。

金華山の頂上から、長良川と町並みを一望

  • 写真提供 岐阜市

絵付け体験で多くの人びとと接するうちに、もっと岐阜の歴史や魅力を伝えたいと勉強し、ガイドとして岐阜の町並みを案内するようになった山下さん。長良川の川湊として栄えた川原町には、格子戸のある古い家屋が軒を連ね、伝統工芸品の岐阜うちわの店や、岐阜和傘の店、郷土菓子の鮎菓子で人気の和菓子屋などがあります。風情が残る古い町並みは観光客にも人気の場所。

「岐阜に来たら、金華山にたたずむ岐阜城に登って、織田信長も見たその景色を眺めてみてほしいですね。長良川と、そこに広がる町が一望できます。川があるからこそ人の営みが生まれ、岐阜提灯のような伝統工芸が生まれた。信長の心が息づき、守り抜かれたこの町を、ぜひ見ていってください」。

旅のメモ

手しごとを見て、触れて、体験して、買える

「長良川てしごと町家CASA」では、美濃和紙や竹を用いた提灯・うちわ・和傘をはじめとした美しいプロダクトの購入や制作体験ができます。「イチから自分で作るミニぎふ提灯」や「ぎふ提灯の絵付け」はこの体験型工房で!

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