• HOME
  • 特集一覧
  • 自然の恵みに感謝!命をいただく、ぎふジビエ

自然の恵みに感謝!命をいただく、ぎふジビエ

郡上市明宝で罠猟にこだわって野生動物を狩猟し、解体、食肉加工まで行う「ジビエ工房めいほう」。一流料理人も絶賛するジビエ肉のおいしさの秘訣は、郡上の豊かな森林と、生きたまま捕らえる罠猟にあります。

訪れた日は、大雪が降った翌日。動物たちの足跡は消えていましたが、樹皮が削られた木や、不自然にちぎられた葉から、野生動物が近くに暮らすことを感じることができました。

<この記事は、(株)岐阜新聞社と岐阜県観光連盟との共同企画で制作しました。>

訪ねた人:元満真道(もとみつ・しんどう)さん
ジビエ工房めいほう代表。39歳の時に郡上の自然に魅かれて、福岡県から移住。突然訪れた解体体験を機に狩猟免許を取得。子どもたちに「命をいただく」意味を伝えながら、おいしく安全な「明宝ジビエ」のブランド化に取り組んでいる。
自然の恵みに感謝!命をいただく、ぎふジビエ

郡上の美しい自然に魅了され、移住を決意

郡上市は、かつて「日本三大猪産地」といわれており、昔から狩猟が盛んでした。

東海北陸自動車道「郡上八幡IC」を降り、高山方面へと向かう「せせらぎ街道」沿いに、「ジビエ工房めいほう」があります。そのジビエ肉のおいしさは、食材にこだわる料理人も絶賛。

代表の元満真道さんは福岡県出身で、39歳の時に郡上市明宝へ移住。遠い親戚の縁があって岐阜へ訪れる機会があり、偶然、郡上を訪れた時に、その自然の美しさに一目惚れしたそうです。

「郡上は水のきれいさが他とは違うんです」。

忘れられない最初の狩猟と解体体験

移住してすぐは、自然体験インストラクターの仕事をしていた元満さん。最初の解体体験は急に訪れます。

「自然体験施設でイノシシが箱罠にかかっていたんです」。

命と対峙する最初の体験は、その場面のインパクトが強すぎて何も考えられなかったと話します。

「とにかく必死で解体して、帰宅したのは夜中12時過ぎ。疲れと眠気で倒れそうでしたが、解体した肉を焼いて食べました。そうしたら元気になったんです。体がたんぱく質を欲しがっていたのがわかりました」。

命をいただく意味を伝える

「捌いた時のことを思い返し、たくさん流れる血、骨、皮、命をいただくということを子どもたちに伝えなければと狩猟免許取得のための勉強を始めました」。

移住する前まではベジタリアンだった元満さん。滋養に満ちたジビエのおいしさを追求するようになります。捕獲から解体、加工、保管、商品開発、営業など現場を一人でこなし、地域の協力もあり「明宝ジビエ」のブランド化に取り組んでいます。

おいしい食肉のための罠猟

「鉄砲猟を勧められたこともあるけど、私は罠猟にこだわっていきたい。自然に生きる動物に火薬を使うのはずるい気がして。それに私は食肉を目的にしているので」。

罠猟は、動物の足跡や木につけた爪や角の傷跡、草の噛み跡などを辿り、罠をかける場所を予測します。山の地形を知り尽くし、局所的にも大所的にも物事を見る観察眼がないと仕留めることはできません。山ごとの脈、谷を記憶し、広大な森にたった12cmの罠を仕掛けます。

「鉄砲だと、弾が当たったショックで、打たれた部分やその周りの肉はかたくなり食肉には向かない。体内で血が肉に沁み、味が落ちてしまいます」。

一流シェフも舌鼓のジビエ

罠にかかった獲物は担いで生きたまま山から降ろし、トラックで工房まで運びます。

「解体は、心臓が動いている間に、動脈と静脈を一気に切ります。心臓がポンプの役割をして一気に血が抜けるので生臭くならないんです」。

ジビエのおいしさの秘訣は、生きた状態であること。

「シカ肉は、赤身に旨味が詰まっていて、あっさりしてコクがある。イノシシは豚肉よりさっぱりしているし、クマはコクと甘味が濃いです」。

罠で仕留めたジビエは、一流シェフも舌を巻きます。東京吉兆で修行し、フランスやバンコクの日本大使館で腕を磨いた「オーベルジュ玄珠」(高山市清見町)のシェフもその一人。

自然の豊かさと出会う場所

「春は山菜、夏に川魚、秋にはきのこ、冬にジビエ。ここには畑も、きれいな川も、満天の星もある。自分の世界が満たされていると感じるんです」。

移住して8年、今では地元の猟師の中でも捕獲高が高く、一目置かれた存在に。

ジビエ工房めいほうでは、1組限定で山に入り、罠猟を体験するツアーもあります。

「ほら、ここにシカが食べた跡があるでしょ」。

視線の先には、不自然にちぎれた笹の葉が。気配は感じないものの、確かにここには自分たち人間以外の生きものがいることを感じ取ることができます。

自然の恵み、滋味深い味わいのジビエ

冷凍したシカのもも肉を持ち帰り、フライパンで焼いて塩で食べてみました。肉質は柔らかく全く臭みがありません。コクと旨味が凝縮していて、噛むほどに滋味深い味わいが口に広がります。郡上の豊かな自然の恵みです。

ジビエ工房めいほうは、岐阜県の”ぎふジビエ”に認定されており 解体設備はもちろん、 解体方法、保存方法など細かに制定された「ぎふジビエガイドライン」に則って安全に運営されています。

食肉加工された冷凍ジビエは、ジビエ工房めいほうや、「道の駅明宝」の物産館、「道の駅古今伝授の里やまと」にある「みちしる」などで購入することができます。