時を越えて“武将観光” いざ関ケ原へ出陣

日本の歴史で“天下分け目の大合戦”といえば、1600年に起きた徳川家康と石田三成による「関ケ原の戦い」。戦いの遺構は現在も、岐阜県の不破郡関ケ原町に数多く残ります。
わずか半日で決着のついた関ケ原の戦いの跡地には、東西軍の各武将が陣を取り、策に思い巡らせた山々とおだやかな平原が広がり、当時の面影を残しています。
関ケ原に誰よりも魅了され、「古戦場おもてなし武将隊 関ケ原組」として活躍する島左近さんに、現代の関ケ原を存分に楽しむための“攻め方”を聞きました。

<この記事は、(株)岐阜新聞社と岐阜県観光連盟との共同企画で制作しました。>

訪ねた人:島左近さん(古戦場おもてなし武将隊 関ケ原組) 
関ケ原観光協会公認の「古戦場おもてなし武将隊 関ケ原組」代表。殺陣・扇・旗を使用した演武を各地イベントで披露するなど、関ケ原町のPRに尽力する。
時を越えて“武将観光”  いざ関ケ原へ出陣

いざ、天下分け目の決戦の地へ。

さかのぼること約420年、1600年9月15日。徳川家康率いる東軍と、石田三成率いる西軍が天下をかけてぶつかり合った、この大決戦は、美濃国(現在の岐阜県)にある静かな平原、ここ関ケ原で繰り広げられました。

JR関ケ原駅を降りると、合戦で活躍した名だたる武将たちの名前や旗、家紋があちらこちらに掲げられています。

“「何もない」がある町”に魅了され

「歴史が得意でなかった方でも、『関ケ原』という地名は知っておるのではないかのう。だがどこにあるかを知らない方も多いであろう。合戦が行われた現在の関ケ原町は、小さいが大きなスケールを持つ町。どんなテーマパークも超える可能性を秘めておるとワシは思う」。

合戦の空気が流れるここ関ケ原町に生まれ育ち、奥深さに魅了されたこのお方は、「古戦場おもてなし武将隊 関ケ原組」の島左近として活躍。甲冑(かっちゅう)を身にまとえば、一気に威厳が伝わる戦国時代の武将の顔に。

「古戦場と申すと石碑くらいしか残っていなくて何もないと思われるかもしれないが、だからこそ残っている景色があり、当時に思いを馳せることができる。“何もない”も楽しむことができるのがこの町かものう」。

旅の入り口は記念館。戦場に飛び込む大迫力の演出

2020年10月にオープンした「岐阜関ケ原古戦場記念館」。世界三大古戦場の名にふさわしい観光拠点が完成しました。

床面に設置された巨大なスクリーン「グラウンド・ビジョン」で、関ケ原の戦いまでに至る経緯や6時間にわたる東西両軍の戦況を一気に確認。奥の扉が開いた先で待ち構えるのは、縦4.5メートル、横13メートルの巨大曲面シアター。両軍の激突が武将たちの目線で描かれます。

頬をかすめる風、体を揺らす振動。光と音が入り乱れる迫力たっぷりの演出は、合戦場に迷い込んだかのような感覚に。テーマパークのアトラクションばりの興奮が襲います。

展示室から 戦いの舞台を一気に見渡す

記念館で見逃してはいけないのが、360度のパノラマが見渡せる5階の展望室。ここから名将たちが陣を構えた、戦いのキーとなるあらゆる山々が望めます。

西軍の大将・石田三成が布陣した、関ケ原全体を見渡せる絶好のポイント「笹尾山」。東軍・黒田長政と竹中重門が陣を置いて開戦を告げる烽火(のろし)をあげた「岡山」。小早川秀秋が運命を分ける最後の判断を下すまで鎮座した「松尾山」。何度もドラマや小説に描かれた本物の舞台が、目の前に広がります。

「この一帯に、東西両軍合わせて当時約15万もの兵が集結したといわれておる。忠義や謀略、葛藤がうずまいたこの景色をぜひ見てほしいのう」。

地形や距離感をつかむことで、戦の様子が手に取るようにイメージできそうです。

陣跡の山に立ち、武将たちの葛藤に思いを馳せる

記念館の屋上から関ケ原全体をチェックしたら、次はいよいよ陣跡へ。東軍西軍のどちらかにごひいきのある人は、一方の陣跡をぐるっと巡るのもあり。思い入れのある武将にスポットを当てて巡るのもいいでしょう。史跡ガイドに事前に案内をお願いして、陣地を巡ることもできます。ミクロな関ケ原を目指して、いざ向かってみましょう。

「実際に山の上に立つと、武将の気持ちになって戦いの想像ができる。本当にそれぞれ見え方が違ってくるものじゃ」。

移動は車でざっと回るのもいいですが、時間がゆったり流れる関ケ原に合わせて、徒歩やレンタサイクルがおすすめです。徒歩なら足軽、レンタサイクルなら馬に乗った武将の気持ちになれるかもしれません。

「1日どっぷり楽しめる場所じゃ。記念館で見た映像を、現地でさらに想像し重ね合わせてみるのもよかろう」。

甲冑をまとって歩く決戦地

記念館から北西に続くなだらかな坂を上っていくと、風になびくのぼり旗と「決戦地」と刻まれた石碑が堂々と立っています。奥には石田三成や島左近が陣を敷いた笹尾山が見えます。

笹尾山のふもとにあるのが、甲冑体験のできる「笹尾山交流館」。甲冑には紙で作られた子ども用から足軽、名物武将の甲冑を模したプレミアム品までさまざま。中には重さ20キロ近いものもあるとか。

これらを身につけて外に出れば、そこはまさに決戦地。甲冑と景色、空気をすべて体で感じ、420年前のあの日に、思いを馳せてください。

史跡を守り続けてきた地元の人のあたたかさ

「町を巡っておると、地元の人たちに出会うこともある。気軽に声を掛けてくれ、道を教えてくれるやさしさが心に残ったと話す観光客も多いと聞く」。

旅の道中で、史跡を大切に守ってきた関ケ原の人びとのあたたかさが感じられます。

史跡巡りに疲れたら、関ケ原ならではのグルメを味わいましょう。武将の名のついたスイーツがあるカフェや、東西の味の違いを試すことのできるうどん屋など、地元の人たちによるユニークなお店がたくさんあります。

記念館にはない、数々の限定商品を販売している「関ケ原駅前交流館」も必見です。「裏切りサイダー」「裏切りスナック」など、どうにも気になってしまう商品が並びます。レンタサイクルの受付もここで行われています。

今この瞬間、戦国時代がよみがえる

「ワシは関ケ原の風景の一部になりたいと願う。武将が古戦場に立っていることで、その場が一気に現代から戦国時代になる。訪れた人に、より夢を与えられるとうれしいのう」。

誰よりも熱い思いを持って、武将隊を引っ張る左近さん。イベントなどへの出陣がないときは、笹尾山や古戦場のどこかで、微動だにせず立っていることもあるとか。

関ケ原を巡る中でもし運よく武将に出会えたら、ぜひカッコいい写真を撮ってみてくださいね。

旅のメモ

体験型施設「岐阜関ケ原古戦場記念館」

関ケ原の戦いを俯瞰するグランド・ビジョンや大迫力のシアター映像など、まるで合戦当日の関ケ原にまぎれこんだかのようなリアルな体験ができます。

関ケ原の戦いの発端から終結までを実物資料等を交えて学べる展示室、本物そっくりの武器に触れたり、兜をかぶっての写真撮影ができる戦国体験コーナーなどもあり、歴史の1ページを体中で感じることができます。

体験型施設「岐阜関ケ原古戦場記念館」