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飛騨の里山にステイ!歴史や暮らし、文化を感じる旅

高山の奥座敷、飛騨古川には、時代を超えてゆったりと受け継がれてきた暮らしや文化が残ります。
飛騨古川に伝わる文化や歴史がたっぷり詰まった町家造りの分散型ホテル「里山ステイ」には、コンセプトから企画した山田慈芳(しほ)さんの、100年後の未来につなげる想いが込められています。

<この記事は(株)岐阜新聞社と岐阜県観光連盟との共同企画で制作しました。>

訪ねた人:山田慈芳さん
東京のコンサルティング会社で働いたのち、2年にわたって世界を周遊。夫の山田拓さんとともに株式会社 美ら地球(ちゅらぼし)設立し、SATOYAMA EXPERIENCEをプロデュース。2020年にオープンした「里山ステイ」は主に慈芳さんが企画。
飛騨の里山にステイ!歴史や暮らし、文化を感じる旅

町屋や白壁土蔵が立ち並ぶ飛騨古川

JR飛騨古川駅のロータリーを抜けると、そこには伝統的な町家や白壁土蔵が立ち並ぶ古い町並みが広がります。

城下町の面影を残し、紅白鮮やかな鯉が泳ぐ瀬戸川が流れる情緒豊かな町。観光を楽しむ人びとの横で、地元の人びとの穏やかな日常が紡がれています。

この飛騨古川の美しい町並みを残したい、とかねてより願っていた慈芳さん。

「暮らしを旅する」をコンセプトに、外国人に大人気のサイクリングツアー「里山サイクリング」を運営しています。

古い町並みに溶け込む新たな宿が誕生

そして、2020年に新しく誕生したのが、分散型ホテル「里山ステイ」。古い町並みの通り沿いにSATOYAMA EXPERIENCEのオフィスを兼ねる「NINO-MACHI」と、そこから徒歩約5分のところにある「TONO-MACHI」の2棟があります。

どちらも周囲の景色に溶け込みながら、どこかモダンで端正なたたずまいが人びとの目を引き付けます。

人びとの暮らしに触れる旅

古川へ移住する前、慈芳さんはバックパッカーとして夫の拓さん(総務省 地域力創造アドバイザー)と世界各地を旅していました。その時に感じたのが、地元の人の暮らしに触れる旅の魅力。

古川はそれができる場所だと移住を決意し、二人で飛騨の里山の暮らしをサイクリングでめぐるガイドツアー「里山サイクリング」を始めました。

消えゆく美しい木造家屋を守りたい

もう一つ、慈芳さん夫婦が惹かれた古川の魅力。それは飛騨の匠たちによって建てられた木造家屋が多く残る古い町並みです。

「高い伝統技術が残されていて、その美しさに惚れ込みました。でも生活様式の変化や過疎化によって、一軒一軒減っていく。何か直接貢献できることはないのか、ずっと考えていました」。

移住から14年。思いを形にした里山ステイは、古川の美しい町並みに貢献する「景観デザイン賞」にも選ばれました。

コンセプトは"100年後の古民家"

「NINO-MACHI」の場所には、元は料亭の建物が残されていました。

「とても立派だったんですが、痛みが激しくて改築は難しかった。ならいっそ、木造家屋を新築してみようと」。古川の町家を数多く手がける地元の建築家に設計を依頼し、飛騨の古民家に見られる牛丸太などを取り入れました。

「NINO-MACHI」の母屋の裏にある築120年の蔵は、まるごと宿泊部屋として提供。一部を改装したのみで、漆喰がはがれた土壁や、1904年(明治37年)に起こった大火の焼け跡など、蔵が生きた時代の記憶は残したまま。一方「TONO-MACHI」は、元和風スナックの建物をリノベーション。町並みに溶け込んだ外見はほぼ変えていません。

飛騨の伝統でつくる空間

各部屋に置かれた家具も、地元の職人によるもの。これらはできる限り飛騨で採れた木で作られています。寝室に置かれたクッションカバーやベッドの装飾には、飛騨市河合の伝統工芸品「山中和紙」を使用しています。

「山中和紙は、楮(こうぞ)を雪にさらすなどすごく特徴があるのに、知名度がないのが悔しくて」と慈芳さん。

受け継がれてきた日本の手仕事のぬくもりに包まれた部屋で、じっくりとその恩恵を感じ入ることができます。

ローカルに親しみ、暮らしを旅する

この宿には、テレビや豪勢な夕食はありません。宿でゆったり過ごすのではなく、町に出かけるためのとまり木。

「ごはんは外で食べてもいいし、通りにある地元の人ご用達のお惣菜屋さんで買ってきて、宿で食べてもいい。地元の人と触れ合って、ローカルを楽しんでほしいです」。

母屋の2階廊下は、毎年4月に行われる古川祭の特等席。格子を外せば、迫力満点の起し太鼓や豪華絢爛な屋台行列を目の前で見ることができます。

残したい風景を、100年先まで

飛騨古川には、数々の残したい風景があります。昔ながらの植物性の原料を使い、全行程を手作業でおこなう三嶋和ろうそく店。ただ生活空間として、瀬戸川沿いを通学していく小学生たち。1月15日の夜、町内の3つの寺を詣でる伝統風習「三寺まいり」は200年以上続き、雪の中でろうそくの光に照らされながら手を合わせる和服姿の女性たちが恋愛成就を祈ります。

飛騨古川の暮らしや人びとの姿に触れる旅。里山ステイは、100年後に古民家となる未来を見据え、これから数々の旅人たちを迎えます。

旅のメモ

飛騨古川、瀬戸川と白壁土蔵街

情緒豊かな景観は城下町飛騨古川のメインスポット。季節によって表情をかえる町並みは散策にぴったりです。

飛騨古川、瀬戸川と白壁土蔵街