地元レポーター発!旅のコラム

ランプの宿「渡合温泉」宿泊体験記 | 圏外でデトックス旅。秘湯のおもてなしに触れる

土庄雄平
土庄雄平
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全国各地にあるランプの宿。電気が供給されていない山奥にあり、夜にはランプの明かりを灯すことから、こうした愛称で親しまれています。

そんなランプの宿ですが、実は岐阜県にもあるのはご存知でしょうか?その名も「ランプの宿 渡合(どあい)温泉旅館」(以下「渡合温泉」と略す)。付知川の源流にある一軒宿です。

山仕事の人や湯治客に愛された温泉に、食べきれないほどの山の幸、ユーモアあふれるご主人と宿泊者同士のコミュニケーション。忘れられない時間を過ごせたので、レポートしてみたいと思います。

山奥にある秘湯。付知川の奥の奥へ

「渡合温泉」が位置しているのは、中津川市の景勝地・付知峡の近く。

国道256号線「付知峡口」交差点を曲がり、県道486号線をしばらく進むと、林道ゲートに出てきます。

  • ここ行くの?レベルの道が続く

ここから渡合温泉まで8kmの道のり。

途中、未舗装路や道幅が狭くなる区間もあるので、運転には細心の注意を払いましょう。

  • 轟く高樽の滝
  • 渡合温泉へ行くまでもすでに楽しい(笑)

5kmほど進むと、途中に「高樽の滝」が見られます。

美しい緑と透き通った清流に注ぎ込む、落差21mの滝の姿は圧巻です。

  • クリンソウ彩る。初夏の渡合温泉
  • シャガの花も満開

高樽の滝からおよそ4km弱、一本道を進むと渡合温泉に到着します。


「こんなところに宿があるのか?」と疑いたくなるほど隔絶された場所ですが、それゆえにたどり着いた達成感もひとしおです。

自給自足スタイルを続ける温泉旅館

チェックインすると、オーナーさん家族が温かく迎えてくれます。


「温泉の準備がもうすぐ終わるので、すぐ入れますよ」と朗らかなお母さん。黙々と仕事をする息子さんからも、人情味が伝わってきました。

  • 宿のご主人が生まれる前のランプもあるのだとか
  • 自然光とオレンジの明かりで満たされる
  • 緑に溶け込むランプ
  • お風呂にも静かに灯る
  • 階段を照らす明かり

館内にはたくさんのガスランプが吊るされていました。名前の通り、電気の通じていない渡合温泉。


日中は自家発電で必要最低限の電力をまかない、夜にはランプだけの明かりが灯ります。スマートフォンは圏外で、まさに隔絶した秘境です。

入り口近くには、たくさんのドリンクが、湧水でキーンと冷やされていました。


何から何まで自給自足。開湯当初から変わらないこのスタイルこそ、渡合温泉が愛され、今なお多くの秘湯ファンに支持されている理由です。

快適で綺麗なお部屋。何もない贅沢を楽しむ

  • 緑に包まれるシンプルなお部屋
  • 浴衣もしっかり完備!
  • 「さぁ何しよう?」の時は、ご案内をチェック

山奥にある年季の入ったお宿が多く、なかなかカップルや夫婦旅に選びづらいイメージの秘湯。


しかし渡合温泉は、お部屋やトイレなどが綺麗に保たれており、とても居心地が良いです。虫の苦手な筆者の奥さんからも「このお部屋なら大丈夫!」とお墨付きをもらいました。

標高850mの山間にある渡合温泉は、夏でもクーラーいらずの涼しさ。初夏や秋は少し寒いくらいです。そのため季節によっては、豆炭を用意していただけます。


とてもシンプルなお部屋ですが、秘湯だからこそ”何もない贅沢”を楽しめます。窓に映り込む、色鮮やかな緑が本当に美しいです。

緑が映り込む。薪で沸かした温泉

  • ひとりぼーっと温泉に浸かる

かつて林業で賑わった恵那郡加子母地区。山仕事をする人々を癒す温泉として始まった渡合温泉は、源泉温度10.6℃の冷泉を薪で沸かして供給しています。


温泉と山の湧き水を入れた二つの浴槽があり、香りの良い高野槙(こうやまき)で造られています。泉質はナトリウム – 塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉。肌に染み渡っていくような繊細な肌触りのお湯です。

  • 爽快な青空と緑が映り込む朝

浴槽にちゃぷんと入り、肩まで浸かると、ザァーとこぼれるお湯。たぷんたぷんと揺れる水面には、鮮やかな周囲の緑が映り込みます。


浴室内に鳴り響く、清流の音に耳を傾けながら、ひとり内省にふけるように入浴の時間を過ごしました。お風呂から出ると、なんだか心身ともに軽くなった気分に。

山の幸盛りだくさん。食べきれない豪華なお料理

  • 写真に収まりきらない夕食
  • 朝食も活力たっぷりと!
  • 緑に心洗われるお食事処

渡合温泉の楽しみの一つが、山の幸が詰まったお料理です。山が育んだ山菜や、渓流から採れる川魚など、天然食材が豪華に食卓を彩ります。


お造りのイワナは、山の綺麗な水を引き込んだ生簀で直前まで泳がせていたものを使用。綺麗なピンク色をした身はコリコリと引き締まり、とても新鮮です。ほろほろとした鯉の煮付けも味がよくしみて絶品でした。

  • どでかい五平餅は食べ応え抜群!
  • 試しに・・・!笑
  • シメの山菜の天ぷらが絶品

そんなお料理の中で、渡合温泉名物が「わらじ五平餅」。五平餅は岐阜県・愛知県山間部の郷土料理ですが、これほど巨大な五平餅は見たことがありません。


おおよそ顔の大きさぐらいあります(笑)醤油ダレを染み込ませて、香ばしく焼き上げた一品は本当に食べ応えがあります。そしてこの後に、山菜の天ぷらの盛り合わせが登場するので、お腹がパンパンです!

少年心に戻るよう。ランプの講習会とゲームを楽しむ

  • ランプの取り扱い講習会は渡合温泉名物
  • ランプ講習会から、いつの間にかゲームの時間へ突入
  • 消灯後は一部屋に一つ持ち帰り

夜には自家発電を止め、22時を過ぎると完全にランプの明かりだけになる渡合温泉。そのため夕食を食べ終わると、宿のご主人からランプの使い方講習会があります。


ユーモアあふれるご主人のトークに引き込まれながら、宿泊者同士の笑い声に包まれます。講習が終わると自由解散ですが、そのままご主人が色々なゲームや遊びで楽しませてくれるので、残る方も多くいらっしゃいました。

  • 自分で起こした火で、ランプを灯す遊び
  • 空き缶でコンロを作成
  • 朝もみなさんゲームに夢中!ご主人は得意気♪(笑)
  • なんと景品を夫婦で4つもゲット!

空き缶を加工してコンロを作ったり、摩擦熱で炭に火を起こしたり、絶対に緩まない”もやい結び”講座など。また朝のチェックアウト前には、景品も出る射的や卓上ゲームなどにも挑戦できます。


滞在中は宿にいるみんなで、まるで童心にかえったようなワクワクする時間を過ごせました。温泉やお料理など魅力たくさんの渡合温泉ですが、多くのリピーターに愛されているのは、ここでしか味わえない人とのふれあいや人情味でしょう。


いつまでも変わらず残って欲しい。そう願わずにはいられない素晴らしいお宿です。

宿泊前後は、付知峡で涼感に浸る散策を

  • 垂直に注ぐダイナミックな不動滝
  • マイナスイオンあふれる付知峡
  • 色鮮やかな樹林に心洗われる

宿のチェックイン前後は、付知峡で涼感に浸る旅がオススメです。付知川は岐阜県有数の透明度を誇っており、不動滝や観音滝といった名瀑を育みます。


夏には溢れるほど鮮やかな緑に包まれ、轟音とともに注ぎ込む姿は圧巻です。空気中に散ってゆくマイナスイオンは、まさに天然クーラーと言える涼しさですよ。

渡合温泉から付知峡までは、車で約30分の距離になります。散策コースを歩いても全体で1時間ほどなので、ぜひサクッと立ち寄ってみてください。


散策後に、湧水で冷やされたトマトやキュウリをいただくのが最高です!

この記事のレポーター

土庄雄平
土庄雄平
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。会社員のかたわら、山岳自転車旅ライターとして活動する。飛騨地方の雪山が大好物。春は北アルプス麓の桜に見惚れ、夏は清流と瀑布に涼み、秋は霊峰白山の紅葉に抱かれる。

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