地元レポーター発!旅のコラム

新穂高温泉「槍見館」宿泊体験記 | 秘湯を楽しみ尽くす7種の露天風呂と老舗宿ならではのおもてなしに感動

土庄雄平
土庄雄平
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多くのアルピニストに愛される穂高連峰。槍ヶ岳や奥穂高岳を中心として、標高3000m前後の山々が連なる山脈は、まさに日本の屋根の一つを形成しています。

そんな雄大な山脈の懐に湧き出る、5つもの温泉からなる奥飛騨温泉郷では、日本屈指の山岳パノラマを楽しむ入浴が可能です。

今回は、奥飛騨温泉郷・新穂高温泉を代表する秘湯宿「槍見館(やりみかん)」をご紹介。豪華な7種類の露天風呂や、山・渓流の幸、歴史あるお宿ならではのおもてなしなど。

大自然に抱かれながら、日常を忘れてリフレッシュできたので、レポートしてみたいと思います。

奥飛騨を代表する秘湯の一軒宿

  • 築200年の古民家を移築した母家
  • 新穂高ロープウェイから望む槍ヶ岳

奥飛騨温泉郷のうち新穂高温泉にある「槍見館」は、野湯として有名な「新穂高の湯」の隣、蒲田川沿いに位置しています。まさに秘湯の宿と呼ぶに相応しいロケーションです。


車で約5分の場所には「新穂高ロープウェイ」があり、北アルプスの大パノラマを楽しむことができます。

※2023年5月8日(月)~8月9日(水) はメンテナンス工事のため運行休止


「槍見館」は1925年(大正14年)に開業した老舗温泉旅館。奥飛騨では2番目に古い開業だと言われています。

  • 岐阜を代表する"日本秘湯を守る会"の宿

初めは小さな湯治場からのスタートでしたが、根強いファンに支えられ、古民家の移築や全面リニューアルを経て、奥飛騨を代表する名宿として知られるようになりました。


日本秘湯を守る会の会員宿の一つであり、槍見館に泊まるために奥飛騨を訪れるという温泉マニアもいらっしゃるほどの人気ぶりです。

五感で楽しむ。古民家をいかした和の空間

  • 落ち着いた時間が流れる土間
  • ランプが館内をほのかに灯す
  • 館内の一角に設けられたギャラリー

囲炉裏を設えた広間や、天井から吊るされたランプ、湧水で冷やされたドリンクなど、館内には、古き良き日本の香りがする空間が広がっていました。


夏ということもあり、木のひんやりとした肌触りが気持ちが良かったです。

  • ひんやりとした木のロビー
  • 蒲酒造場の甘酒サービスが嬉しい

もうすぐ100周年を迎える秘湯のお宿でありながら、とても綺麗にリノベーションされているのもポイント。民芸調の内観が、建物の随所に感じられる年季と調和しています。


地元の酒造さんの酒粕で作った甘酒をいただきながら、チェックイン後の時間をゆっくりと過ごしました。

  • 扇風機で館内まで漂う香り
  • 正体は炭火で焼かれた焼き魚

「何だか良い匂いがするぞ...!」と思って廊下を歩いてみたら、夕食のお魚を焼いているシーンに遭遇。


開業当初から受け継がれている手の込んだおもてなしに、思わず心がほっこりしました。

囲炉裏端付。民芸調タイプのお部屋に宿泊

  • お部屋の一角にある囲炉裏端
  • 複雑に組み合わされたお部屋の梁

今回私が宿泊したのは民芸調タイプのお部屋。太い梁をいかした古民家造りの客室で、広縁には囲炉裏端が設けられていました。


「槍見館」には、他にも和モダンタイプや内湯付き和洋室、土蔵造り離れなどのお部屋があります。総部屋数は15部屋です。

  • 3人でも十分な広さのお部屋

窓の向こうには色鮮やかな緑、照明もほのかで秘湯らしい落ち着いたお部屋でした。


親子3人で寝るには十分な広さ。畳と木の香り、そして質感。都会のマンションに住んでいると、古民家のお部屋だけでも非日常を感じられますね。

抜群のロケーションを誇る温泉!露天風呂は7種類

  • 透明でしっとりとした単純泉のお湯
  • 露天風呂の湯めぐりが楽しめる

「槍見館」には計7種類もの露天風呂が設けられ、宿泊者はチェックインからアウトまで何度も入ることができます。しかも、そのうち4つは家族風呂として貸切利用が可能です。


泉質は単純温泉・炭酸水素塩泉。無色透明のお湯は、しっとりとした化粧水のような肌触り。また、さっぱりとしていながら湯冷めしにくいのが特徴です。

1.混浴露天風呂「槍見の湯」

  • 蒲田川を望むパノラマ露天風呂
  • 槍ヶ岳がほんの一瞬だけ
  • 秘湯の夜も最高に非日常
  • 冬はこんな感じ

お宿を代表するのが、混浴露天風呂「槍見の湯」。蒲田川の川辺に設けられた岩造りの露天風呂で、天気が良ければ槍ヶ岳を望むことができます。


雲が多く、たまに小雨がちらつく生憎の天気だったのですが、ほんの一瞬だけ槍ヶ岳が顔を覗かせてくれました。山の神様に感謝です。


混浴露天風呂のため、湯浴みを無料で借りられるのもポイント。早朝には女性限定の入浴時間も設けられています。

2.混浴露天風呂「まんてんの湯」

  • 岩に囲まれた隠れ家風呂
  • 広々と源泉掛け流しを満喫
  • 冬はこんな感じ

槍見館でもっとも由緒ある混浴露天風呂「まんてんの湯」。岩造りの野趣ある浴槽には巨石が配され、なんだか隠れ家感があります。


岩に隠れてゆっくり温泉に浸かるもよし、蒲田川の清流を眺めるのもよし。まるで奥飛騨の自然に身を委ねているような入浴が楽しめます。


ややぬるめで、いつまでも浸かっていられる適温。雨に濡れずに入浴できるのもポイントです。

3.貸切露天風呂

  • 秘湯らしい「ほたるの湯」
  • ざぶんと浸かる「渓流の湯」
  • 緑映り込む「播隆の湯」
  • 遊び心ある「森の湯」

宿泊者のみ「ほたるの湯」「渓流の湯」「播隆の湯」「森の湯」という4つの貸切露天風呂を利用できます。


全て違う趣の浴槽となっていて、自然に溶け込むロケーションが抜群です。私のおすすめは「渓流の湯」。蒲田川を眺めるロケーションで、こぢんまりと設けられた木造の浴槽。まさに湯治に訪れているような風情を味わえます。


また「森の湯」は打たせ湯のほか、なんと滑り台やブランコ付き。家族連れでも温泉を楽しめる遊び心が感じられる湯小屋です。

4.男女別大浴場

  • 広々とした木の浴槽2つ
  • 湯治場を思わせる雰囲気も
  • 木の香りが心地よい脱衣所

贅沢な露天風呂に加えて、男女別の大浴場も設けられています。シャンプー類はこちらに置かれているので、まず大浴場で身体を洗ってから、露天風呂を巡ると良いでしょう。


晴れていれば、槍ヶ岳まで見渡せる眺望と開放感が魅力です。宿泊客だけの利用のため、空いていることがほとんど。混み合うことは珍しく、ほぼ貸切です。


少し熱めの湯温のため、身体を洗ってサクッと入浴。短時間でありながら湯冷めしにくく、お湯の効能を実感することができました。

山と渓流のごちそう。活力をいただける朝・夕のお料理

  • 山菜たっぷりの前菜から

温泉に加え「槍見館」が愛されている理由の一つであるお料理。山や渓流の幸が詰まった和食懐石をいただくことができます。


前菜は山菜のオンパレード。どれも地の味が生きた天然素材ばかりです。驚いたのは、その中にサワガニが出てきたこと。殻までそのままパクッとおやつ感覚でいただきました。

  • メインはやはり飛騨牛
  • 渓の恵み・川魚のお刺身
  • 川魚の塩焼きにかぶりつく

飛騨牛の陶板焼きや、川魚のお刺身3種盛りなどメインを構成するお料理も満載です。ジューシーで上質な肉の脂と、繊細で歯ごたえ抜群のお魚の身。旨い飯には、美味い酒も進みます。


川魚の塩焼きも、外は香ばしくパリッと、中はホクホクで滋味深く、素材の良さがいきています。

  • 〆のお米が感動のおいしさ

最後は自家製のお漬物と、地元のお米を一緒に。「和仁農園」のコシヒカリは、一粒一粒が甘くしっかりしており、感動レベルのおいしさでした。

  • 活力をいっぱいいただける朝食
  • 朴葉味噌は最高のごはんのおとも
  • 干物も良い焼き具合まで

夕食だけでなく朝食も豪華です。中でも飛騨名物・朴葉味噌は何杯でも白米をおかわりできる最高のご飯のおとも。


小鉢類も一品一品、優しい味わいで、朝からほっこりとパワーチャージをさせていただきました。

毎朝9時から餅つき体験!老舗のおもてなしを楽しむ

  • シンプルが一番おいしい大根おろし
  • 甘いきな粉をふりかけて
  • つきたてを皆でいただける幸せ

毎朝9時には槍見館の恒例行事のお餅つきが開催されます。宿泊者も実際にお餅をつくことができ、つきたてのお餅を大根おろしかきな粉でいただけます。


柔らかく適度に弾力があり、お米の甘さがいきたお餅は本当においしいです。宿泊者が一堂に会し、イベントを楽しむ一体感もなんだか良いですね。


こうして、最後までお宿でのひとときを満喫しました。素晴らしい温泉に加えて、心和らぐおもてなしに浸れる秘湯「槍見館」。


私の中では、このお宿の存在自体が”岐阜の宝もの”です。ぜひ一度、非日常を求めて訪れてみてはいかがでしょうか。

この記事のレポーター

土庄雄平
土庄雄平
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。会社員のかたわら、山岳自転車旅ライターとして活動する。飛騨地方の雪山が大好物。春は北アルプス麓の桜に見惚れ、夏は清流と瀑布に涼み、秋は霊峰白山の紅葉に抱かれる。

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