映画『ブラック・ショーマン』岐阜ロケ地めぐり|郡上と苗木城、“名もなき町”の舞台へ
- 長月あき

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全国各地で撮影が行われた本作の中でも、物語の舞台「名もなき町」として印象的に描かれたのが、岐阜県の郡上市と中津川市。昨年の紅葉の季節に撮影された映像では、清流と城下町が織りなす郡上八幡の風景や、山城・苗木城跡の雄大な眺望が美しく映し出されています。今回は、そんな映画の世界を彩った岐阜のロケ地をめぐります。

郡上ロケ地1:川沿いの風景「新橋・学校橋・中河原公園」
映画で印象的に登場する美しい川は、郡上市の中心部・郡上八幡を流れる吉田川。郡上八幡は、郡上八幡城の城下町として発展し、今も古い家並みや水路、石畳が残る情緒豊かな町です。清流と山の緑に包まれた景色は、歩くだけで心が和みます。
①新橋
まずご紹介するのは「新橋」。福山雅治さんとバディ役の有村架純さんが言葉を交わすシーンが撮影されました。夏には地元の子どもたちが橋から川に飛び込む姿で知られますが、実際に見下ろしてみるとかなりの高さ。無理な飛び込みは厳禁です。 すぐ近くの「郡上八幡旧庁舎記念館」で観光マップを入手し、まち歩きをするのがおすすめ。
②学校橋
郡上八幡旧庁舎記念館から、江戸時代の用水路「いがわこみち」を歩いて「学校橋」へ。この橋の近くにある岩場から、中学生が川に飛び込む場面が撮影されました。橋の脇から遊歩道に降りると、彼らが腰かけていた石を間近で見ることができます。
③中河原公園
「中河原公園」では、福山さんと有村さんが並んで歩くシーンが撮影されました。清らかな流れと穏やかな町の空気が心地よく、シーズンには鮎釣りの光景も見られる、郡上らしいのどかな散策スポットです。
郡上ロケ地2:レトロなまち並み「本町通り・柳町通り」
郡上八幡城の城下町の面影が色濃く残るまち並みもロケに使用されました。
郡上八幡のメインストリート「本町通り」は、主人公たちが事件の聞き込みを行うシーンで登場します。通りの突き当たりに見える「長敬寺」は、郡上藩初代藩主・遠藤慶隆の菩提寺で、郡上おどりの発祥ともゆかりのある寺院です。映画にも少し映っていました。
また、本町通りと並行している「柳町通り」も有村さんが一人で歩く場面のロケ地です。国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている古いまち並みは、風情たっぷり。映画の余韻に浸りながら、ゆっくりと歩いてみましょう。
郡上ロケ地3:上田酒店(映画では「原口酒店」)
本町通りにある上田酒店は、映画の中で「原口酒店」として登場。福山さんと有村さんが聞き込みに訪れるシーンが撮影されました。
店内には撮影時の写真が展示されているコーナーがあり、映画ファンには嬉しい心配りです。撮影時には映画スタッフが内装を大幅に改装し、壁まで張り替えたのだとか。唯一、重くて外せなかった看板は、CGで店名だけを書き換えてそのまま使用されたそうですよ。
店頭では、地酒を使った日本酒ソフトクリームや冷たい甘酒をいただけて、郡上散策のひと休みにぴったり。こちらのお店で購入できる郡上おどりの免状をラベルのモチーフにした「踊り免状」シリーズの日本酒は、郡上八幡のお土産におすすめです。
郡上ロケ地4:慈恩禅寺(じおんぜんじ)
学校橋から徒歩約5分の場所にある慈恩禅寺では、福山雅治さんが静かに座禅を組むシーンが撮影されました。郡上藩の遠藤家の生まれという説のある、山内一豊の妻・千代ゆかりのお寺(千代の生まれには諸説あり)でもあります。
滝の音が心地よく響く「荎草園(てっそうえん)」は、岩山を背景にした座観式の庭園。静寂の中、座禅を組む福山さんの背後に広がる木々の美しさが、スクリーンを通していっそう際立っていました。
私もこれまでに何度か訪れていますが、どの季節に訪れてもそれぞれに趣があり、滝の音と四季の彩りに包まれた庭園はまさに癒しの空間。受付の方の穏やかな語り口にも、訪れるたび心が和みます
郡上ロケ地5:郡上市郊外「古今伝授の里フィールドミュージアム」
郡上八幡から車で約20分の場所にある「古今伝授の里フィールドミュージアム」は、映画ではホテルの中庭のシーンとして登場しました。
古今伝授とは、『古今和歌集』の歌の読み方や解釈などを、師から弟子へ秘伝として伝えることをいいます。ここは、和歌をテーマにした野外博物館で、国の名勝「東氏館跡庭園」をはじめ、「和歌文学館」や「東氏記念館」などの建物が点在、自然と文化が穏やかに調和するスポットです。
「和歌文学館」と「東氏記念館」は共通入館券で見学でき、それぞれの展示からは、この地の歴史と和歌の世界をより深く感じ取ることができます。
敷地内にある「篠脇山荘」は、普段は茶会や歌会などに使われる趣ある建物ですが、一般開放される日もあります。静かな室内から外を眺めると、四季折々の風景がしっとりと心に染みわたるよう。
また、ミュージアムに隣接する明健神社は、樹齢300年以上の杉に囲まれた神聖な空間。境内に足を踏み入れると、澄んだ空気と木々の香りに包まれ、思わず深呼吸したくなります。
郡上ロケ地6:長良川鉄道「美濃白鳥駅」
長良川鉄道の「美濃白鳥駅」では、有村さんが父の訃報を受け、故郷へ戻るシーンが撮影されました。列車の車窓から見える穏やかな風景と、小さな駅に漂う懐かしさが、映画の世界観と美しく重なります。
駅舎は昭和8年開業当時の木造建築が今も残り、郷愁を誘う佇まい。郡上八幡駅から長良川鉄道でおよそ30分ほどの駅です。
中津川ロケ地:巨岩の山城「苗木城跡」&栗もぜひ!
物語にたびたび登場する「青空の丘公園」のモデルとなったのが、中津川市の苗木城跡です。
来年で築城500年を迎える山城で、自然の巨岩をそのまま取り込んだ石垣と、展望台から望む景色は圧巻。撮影はこちらも絶景が望める笠置矢倉跡で行われたようです。武器蔵跡も、公園から歩いていく有村さんの足元に少し映っていました。
天守跡の展望台からは、建設中のリニアモーターカーの鉄橋を望むこともでき、歴史と現代が交差する風景が広がります。
また、麓の「苗木遠山史料館」には、遠山氏ゆかりの資料や、幕末期の苗木城の復元模型が展示されています。復元模型を見てから城跡を訪れると、往時の姿をよりリアルに感じられますよ。
せっかく中津川を訪れたなら、ロケ地巡りの締めくくりにはぜひ秋の味覚を楽しみたいところです。
中津川といえば、やはり外せないのが栗きんとんをはじめとした栗グルメやスイーツ。
苗木城跡から車で5分ほどの場所にある和菓子店「満天星一休 苗木店」では、店内の茶房で名物の栗おこわをいただくことができます。特に栗のシーズンは多くの人で賑わい、時間帯によっては行列になることもありますが、整理券を受け取るとスマホに呼び出し通知が届くようにできるため、順番を待つ間、車や外で過ごすことができます。
ほくほくとした栗おこわも、なめらかな栗きんとんも、口いっぱいに広がるやさしい甘みと香りが絶品。ロケ地をめぐった旅の余韻を感じながら、地元の味覚を心ゆくまで堪能してみてくださいね。
所在地:岐阜県中津川市苗木岡田2531-1
電話番号:0573-65-0193
営業時間:10:00〜16:00
※営業日・営業時間等の詳細は公式WEBサイトをご確認ください
映画の余韻とともに岐阜の深い魅力を感じられる旅を
郡上市と中津川市は距離があるため、1日ですべてを巡るのは少し大変です。それぞれの町の魅力をじっくり味わうためにも、一泊してゆっくり訪ねるか、それぞれ別の日に訪れるのがおすすめ。どちらも名古屋からは車でおよそ1時間半〜2時間の距離です(ただし紅葉シーズンは渋滞に注意)。
郡上市も中津川市も、それぞれに四季折々の自然と歴史を味わえるまちです。映画と同じ紅葉の季節はもちろんですが、春の新緑や冬の雪景色もまた格別(雪道にはご注意を)。
ぜひ『ブラック・ショーマン』の世界と重なる郡上市、中津川市の風景をたどる旅へ出かけてみてくださいね。


































