地元レポーター発!旅のコラム

多治見で残暑を涼しく、秋を先取り!美濃焼・タイル・本・ガラスをめぐる日帰り旅

長月あき
長月あき
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8月の終わりを迎えても、まだまだ残暑の厳しさが続く季節。それでも心は、少しずつ秋へと移ろい始めています。かつて「日本一暑いまち」として知られた岐阜県多治見市は、1300年の歴史を誇る美濃焼の産地。日本屈指の“やきもののまち”として、陶磁器やモザイクタイルなど多彩な工芸文化に触れられる魅力にあふれています。今回は、そんな多治見で残暑を心地よく楽しみながら、ひと足早く芸術と文化の秋を感じられるおすすめスポットをご紹介します。

幸兵衛窯で器と歴史に出会う

  • まずは本館で受付を
  • 本館2階の展示ギャラリー
  • 古陶磁資料館は奥の箪笥階段から2階・3階も見学できます
  • 工芸館には5代から8代の作品が一同に

最初にご紹介するのは、市之倉地区にある「幸兵衛窯(こうべえがま)」。200年以上の歴史を持ち、美濃焼の伝統を今に伝える窯元です。敷地内には本館、古陶磁資料館、工芸館など複数の建物があり、作品を購入できるショップも併設されています。

受付のある本館には、人間国宝である6代加藤卓男氏の作品を展示するギャラリーや企画展スペースがあります。工芸館には歴代の作品が一堂に並び、古陶磁資料館ではペルシャ陶器、中国・朝鮮の古陶、美濃桃山古陶などが展示されています。どの展示も見応えがあり、陶磁器に詳しくない私でも、その美しさに思わず見入ってしまいました。伝統と革新が息づく空間で器をじっくり鑑賞する時間は、まさに芸術の秋を先取りするような体験です。

さらに、福井県から移築された3階建ての古民家を活かした古陶磁資料館からは、緑に囲まれた中庭の穴窯を望むことができます。座敷に腰を下ろして庭を眺めていると、静寂さと涼やかな光景に夏の暑さをしばし忘れるほど。10月のイベント時には、この穴窯の火入れを見学できるそうです。これほど充実した展示内容にもかかわらず、入館料は大人300円。近くの「市之倉さかづき美術館」との共通入館券(大人600円)もあり、こちらもおすすめです。


■幸兵衛窯

所在地:岐阜県多治見市市之倉町4-124 

開館日時 :9:00~17:00(平日・第1,3土曜日) 10:00~17:00(日祝・第2,4土曜日)
休館日:  年末年始・夏期休暇・その他当社休暇日

入館料:一般/300・大高生/150・中学生以下無料

駐車場:無料

モザイクタイルミュージアムでカラフルなタイルの世界に

  • ユニークな外観が印象的な多治見モザイクタイルミュージアム
  • ミュージアム入り口のドアがかわいい
  • 外壁には埋め込まれたカラフルなタイルや器の破片

幸兵衛窯から車でおよそ15分走ると、砂山のようなユニークな姿をした「モザイクタイルミュージアム」にたどり着きます。多治見はモザイクタイル発祥の地で、現在も全国一の生産量を誇るまちです。建物は採土場をモチーフに設計されており、近づいてみると壁面には割れたタイルや食器がアクセントとして埋め込まれているのがわかります。

館内には多種多様なタイルが展示されると同時に、タイルを使ったアート作品や、タイルと暮らす生活をイメージできる展示など、カラフルで涼しげなタイルの世界を存分に楽しむことができます。どこか子どもの頃の夏休みを思い出させるような、懐かしさを感じさせる展示も印象的でした。


1階には体験工房があり、ワンコインで気軽にタイルの小物作りを体験可能。ミュージアムショップには多彩なタイルグッズが並ぶと同時に、「タイルの詰め放題」などユニークな企画もあり、親子で夢中になれる場所になっています。


■多治見市モザイクタイルミュージアム

所在地:岐阜県多治見市笠原町2082-5 

開館時間:9:00~17:00(入館は閉館の30分前まで) 

休館日:月曜日(休日の場合は翌平日) ※年末年始:12/29~1/3

入館料:個人 500円[特別展示料金(常設展示を含む)] 

駐車場:無料

ミュージアム見学後は、隣接する笠原交流センター1階のタイルカフェ「Kasahara Cafe tuile」へ。モザイクタイルに囲まれた店内では、「お酢ドリンク」や「紫蘇ジュース」など、暑い夏にぴったりの爽やかなメニューが揃います。私は自家製のうめジュース(580円)をチョイス。夏の疲れがすっと和らぎました。


■KasaharaCafe tuile 

所在地:岐阜県多治見市笠原町2081-1

営業時間:平日10:00~15:00  土日祝日10:00~16:00

定休日:月曜日(祝日の場合は営業。翌日火曜日休み)

駐車場:無料

レトロなヒラクビルで本とカフェ時間を楽しむ

  • 商店街のレトロな建物
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多治見駅から徒歩10分ほどの、ながせ商店街に佇むレトロな建物「ヒラクビル」。もとは時計・宝飾店だった建物がリノベーションされ、現在は本屋、カフェ、レンタルルームなどが入る複合施設となっています。

  • この書店ならではの視点でセレクトされた本が並ぶ
  • タイルがあしらわれた店内の柱
  • タイルで装飾された本棚
  • タイル柄のブックカバーとしおりがかわいい!

1、2階にある「ひらく書店 東文堂本店」は、独自の選書が魅力の個性派書店です。お店の規模は大きくないものの、児童書から専門書まで幅広く取りそろえられ、テーマごとに丁寧に作られた棚を眺めているだけで心が弾みます。店内はタイル装飾やレトロな意匠が随所に活かされ、落ち着いた雰囲気。とりわけ、2階のタイルをあしらった本棚は一見の価値があります。


購入した本にかけてもらったタイル柄のブックカバーとしおりがあまりにも可愛らしく、思わず笑みがこぼれました。ブックカバーは外すのがもったいなくて、読み終わった今もそのまま使い続けています。本の手触りや装丁を味わいながら、思いがけない一冊に出会えるのはリアル書店ならではの楽しみ。時間を忘れて本を探すひとときは、本好きにとってまさに至福の時間です。

隣接するカフェ「喫茶わに」では、喫茶メニューやランチを本とともに楽しめます。中央に置かれた大きなテーブルが印象的で、窓際のタイル装飾が施されたカウンター席もおしゃれ。さらに、地元作家による陶芸やタイル作品が展示販売されており、アートを眺めながら過ごせるのも嬉しいポイントです。外にはまだ暑さが残る季節でも、落ち着いた空間で本とアート、そしてドリンクを味わう時間は、ほっと一息つける心地よさでした。

 

ひらく本屋 東文堂・喫茶わに共通

所在地:所在地:岐阜県多治見市本町3-25 ヒラクビル1階

営業時間:10:00〜21:00 (日曜日は19:00閉店)

定休日:水曜日

Tickle glass(ティクルグラス)でガラスのハンコ作り体験

  • 松下さんの作品やガラス体験の見本がずらりと並ぶ
  • あたたかくてユニークな松下さんの作品

旅の締めくくりは、白壁がかわいらしいガラス工房「Tickle glass(ティクルグラス)」へ。ガラス作家・松下さんが営む工房で、吹きガラスやガラスのハンコ作りを体験できます。私は以前こちらで吹きガラス体験をし、一輪挿しを作ったのですが、その仕上がりに大満足。今回は念願の「ガラスのハンコ作り」に挑戦しました。工房内には松下さんの作品や、体験用の見本作品がずらりと並び、目を楽しませてくれます。 

  • ハンコ用のガラスは選ぶのに一苦労!
  • ハンコサイズにあわせた絵・文字を描きます
  • 印面以外の削れてほしくない箇所をテープでカバー
  • 印面を転写したら松下さんが砂で削ってくれます

ハンコ作り体験の流れはとてもシンプル。まずは色・形・大きさなど多彩なガラスの中から、用途に合わせて好みの素材を選びます。透明感あふれる色や個性的な形に目移りして、なかなか決められませんでした。次に、ハンコの大きさに合わせて好きな絵や文字を描きます。サイズは厳密でなくても大丈夫で、多少の調整は後からしてもらえるので安心です。

描いたデザインはパソコンに取り込まれ、特殊な転写シートに印刷。その間に、印面以外の削りたくない部分をテープでカバーします。デザインを印面に転写したあとは、松下さんが砂で丁寧に彫り上げて仕上げてくださいます。火や刃物を使う工程はないので、お子さんでも安心して参加可能。ガラスのハンコは印面がすり減らないので、お子さんの描いた絵や文字をそのまま長く残せる“思い出のかたち”にもなりますね。

  • 真似したくなるラッピング

完成したハンコは、思わず誰かに見せたくなるかわいらしさ。仕上げにラッピングもしてもらえるのが嬉しいポイントです。
オリジナルのハンコは、お礼状やちょっとした贈り物に添えるだけで、特別感を演出してくれます。私は以前作った一輪挿しと似た色合いのガラスを選んだので、今は二つを並べて飾り、楽しんでいます。

 

体験は完全予約制のため、工房のホームページから事前に申し込みを。申し込み時にハンコサイズを選ぶようになっていますが、当日現地でガラスを見てからサイズの変更が可能です。また、吹きガラス体験も本当に素敵な作品ができて、暑さが気にならなくなる秋以降は特におすすめです。


■Tickle glass

所在地:岐阜県多治見市大薮町1278-2

体験日時:要事前予約 

体験料:「細め」1本 4,000円/「大きめ」1個 5,000円(その他、中サイズやもっと大きいサイズもあり)    

駐車場:無料
URL:https://tickle-glass.com/

残暑を楽しみながら心は秋へ 

多治見では、器の静かな佇まいに触れ、色鮮やかなタイルに心を遊ばせ、こだわりの書店とカフェでゆったり過ごし、最後は自分だけのガラス作品を手にする――「涼やかさ」と「芸術・文化」を楽しめるスポットをご紹介しました。残暑の中でも、多治見の魅力と秋の気配を感じながら、1日で無理なく巡ることができます。名古屋からなら、電車でも車でも40分程度とアクセスも良好。次の休日には、暑さのまち・多治見でひと足早い秋を探してみませんか?

この記事のレポーター

長月あき
長月あき
地域の歴史文化や伝統に触れたり、歴史の舞台を訪ねるひとり旅が大好き。週末は車で、各地を走りまわっています。山城を楽しむ体力作りが喫緊の課題。

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