ぎふの旅ガイド

筋骨とは…岐阜県飛騨地方の呼び方で、細い路地が迷路のように絡み合っている公道のこと。

表通りから一歩、筋骨へ足を踏み入れると、昭和にタイムスリップしたかのような街並みが広がります。

人間の「筋(すじ)」や「骨(ほね)」にたとえられ、複雑に交差する路地を歩くのは、至難の業。

道に迷うのが心配な方には、ひだ金山観光協会が主催する【筋骨めぐり】ガイドツアーもあります。また、大変狭く・細い筋骨は、慣れていないと私有地のようにも見えるので、ガイド付きの方が断然歩きやすいです。

もちろん、個人でめぐれるように、街歩きマップなども用意されていて、それぞれお好きなスタイルで散策が楽しめます。

最初にご紹介するのは、筋骨めぐりの目玉の一つともいえる場所。

写真好きの人の間では、「朽ちた感じが面白い」と人気の建物。ジブリ映画『ハウルの動く城』に登場する「動く城」に似ていることから、いつしかそのように呼ばれるようになったそう。

この付近の建物はほとんどが水路の上をまたぐように建っており、水路を横目に軒下のトンネルをくぐる筋骨が続きます。

その珍しい光景を一目見ようと多くの人が訪れ、見どころスポットとなっています。

こちらは、昭和63年(1988年)まで営業していた銭湯です。現在は男湯のみ見学自由。

建物自体は大正時代のもので、番台や落とし鍵のロッカー、当時の料金表など、営業していた時代の空気感をリアルに感じられるスポットです。

当時は長湯ができないように立ち湯スタイルでの入浴。

そのために深めに作られた浴槽の底は、明治時代につくられた白地に青の手書き模様がハイカラな「タイル」が敷き詰められています。

これは「本業タイル」と呼ばれる、日本のタイルの原型。

ガイドさんいわく、実際に使用された状態のまま保存されているのは大変めずらしいんだとか。

【スポット情報】

銭湯跡

住所:岐阜県下呂市金山町金山2214-3

筋骨めぐりの途中に立ち寄れる餅屋さんです。

お餅を使った和菓子も販売しており、中でも人気の黒豆大福には丹波の黒豆を使用。

ごろごろ入っている黒豆は贅沢感があります。お餅は、つきたてのようにやわらかく、食べ応えも抜群。

いちご大福やおはぎなどの季節限定商品も販売されており、そちらも人気です。

和菓子のほかにも、祭事用の赤飯の販売やイベント時の餅撒き用の餅製造も受注しているそうで、地元に親しまれるお店です。

気さくなお店の方の人柄も人気のひみつなのかも。人気の黒豆大福は、午前中に売り切れることもあるそうなので、お店では事前の予約をおすすめしています。

【店舗情報】

餅倖(もちこう)

住所：岐阜県下呂市金山町金山-1935

電話番号：0576-32-2228

営業時間：9:00～17:00

定休日：火曜日

予約：可能

筋骨めぐりでは、路地だけでなく飛騨金山の歴史を感じるスポットもあります。

中でも特に印象的な建物のひとつが「清水楼(せいすいろう)」。

明治初期に建てられた「うなぎ屋」で1990年代後半まで営業していました。

飛騨金山が「飛騨街道 金山宿」だった頃から食事処としてにぎわい、地元の宴会などでも利用されていました。

実は、3階建ての建物なのに通し柱が1本もなく、組み立て式で造られた建物。

「お城造り建築」と呼ばれる豪華な造りに当時の活気を感じるスポットです。

【スポット情報】

清水楼

住所:岐阜県下呂市金山町金山2127

「清水楼」の裏手には「東清水」と呼ばれる湧水スポットがあります。

硬度がほとんどなく、まろやかな味わいと評判の名水で、もちろん飲むこともできます。

ガイドさんによると、飲食店を営む方がわざわざこちらの水を頼りにやって来ることもあるのだとか。

この「清水」は、共同の水場として使用されており、四層に分けられています。

順番に「一号池は飲み水専用」、「二号池は冷やし物専用」、「三号池は食器洗いや野菜洗い専用」、「四号池は洗濯用」とのこと。

飛騨金山の街中には、このほかにも同様の「清水」や水が湧き出る水場、井戸水を汲む手こぎポンプも見かけ、レトロな生活を思い起こさせます。

※すべての湧き水が飲めるわけではありません。案内などをよく読んでから利用しましょう。

【スポット情報】

東清水

住所:岐阜県下呂市金山町金山2133

街なかの筋骨から少しだけコースアウトして、向かったのは馬瀬川のほとり。

飛騨と美濃の境にあたる「境橋」の近くにあるのが、インターネット上で「角度がエグい」と話題になった「最恐の階段」です。ほぼ垂直にも見えるこの階段は36段あります。

なんと、手すりは、もし転んでも壁の方に倒れるように、壁側にしかついていません。

もともとは鮎釣りを生業とする人が川に行くためにつくられた階段で、実際に下りることができます。

下りてみると意外にも急という印象がないのが不思議。上りもはしごを上るような見た目ですが、下の景色が気になるものの、意外にきつくない！

見た目で臆さず、ぜひ体験してみてほしい階段です。

創業は江戸時代の享保5年。300年以上の長い歴史を持つ造り酒屋です。

江戸時代後期の大火の後に建てられた店舗建物は、下呂市内では珍しい「うだつ(防火壁)」があることでも有名。令和4年には、下呂市景観重要建造物第一号に認定されています。

事前予約をすれば、酒蔵見学も可能。店内には「酒造資料展示室」も併設されており、大福帳や昔の酒造りの道具、100年前の足ふみオルガン、蛍石などを展示しています。

さらに見学者限定で、タイミングが良ければ女将さんによるオルガン演奏が聴けるのもおすすめポイントのひとつです。

店内では、お酒の試飲や購入もできます。今回は、代表銘柄のひとつでもある生酒「初緑」をいただきました。フレッシュでみずみずしい味わいでとても飲みやすく、とってもフルーティー。

このほかに、日本の造り酒屋としては変わり種のお米の「ウォッカ」やゆず、梅、りんごリキュールも製造販売されており、お土産にもおすすめですよ。

奥飛騨酒造では、蔵開きも開催されており、2025年の開催は4月27日(日)。

飲み比べチケットの販売のほか、限定酒の瓶詰め、ジャズコンサート、日本酒講座など楽しめる催しがいっぱいです。

【店舗情報】

奥飛騨酒造株式会社

住所：岐阜県下呂市金山町金山1984番地

電話番号：0576-32-2033

営業時間：9:00～17:00

定休日：不定休

予約：可能

ちょっと休憩するのにもおすすめの開放的なスポット。

飛騨街道を歩いて、ふもとから約5分の山登りでたどり着くのが「鎮守山(ちんじゅさん)」です。飛騨金山の街を見下ろすようにそびえる山で、頂上にある観音堂まで階段で登ってみると展望台のように街が一望できます。

この「鎮守山」には、漫画『呪術廻戦』で登場人物のモチーフとしても取り扱われた「両面宿儺」の伝説が残っていて、飛騨地域にある他のゆかりの地と一緒に「聖地巡礼」を楽しむ人もいるそうです。頂上には、観音様を祀った「観音堂」のほか両面宿儺の像もあります。

【スポット情報】

鎮守山 観音堂

住所：岐阜県下呂市金山町金山2249-2

参拝自由(歩きやすい靴で訪れるのがおすすめ)

飛騨金山の古民家で民宿と居酒屋を営むオーナーが、2024年11月にオープンした釜飯専門店。

古民家を活用したモダンな雰囲気の店内で、下呂市で生産されているブランド米「山仙(やません)」を使用した釜飯が味わえます。今回いただいたのは「鮎まぶし(2,800円)」。

飛騨金山産の天然子持ち鮎が載った釜めしは、子持ち鮎のプチプチ触感と、柔らかな身をほぐして味わう特別感がたまりません。

通常のコシヒカリの1.5倍の大きさの粒が特徴の「山仙」は粒立ち抜群。お米を味わう釜めしにぴったりです。

そのまま食べても絶品なのですが、ひつまぶしのように薬味(ネギ、白ごま、刻みのり)をかけたり、だし茶漬けとしても味わえるので、飽きのないおいしさが楽しめます。

そのほか、お手頃価格の平日ランチ限定メニューや、ご当地グルメ・飛騨牛しぐれの釜めしなども提供されていて、バリエーション豊か。

「次はこれが食べたい！」と、絶対通いたくなるラインナップなので、ぜひ立ち寄ってみてください。

【店舗情報】

地酒と釜めし専門店「恩家」十王坂店

住所：岐阜県下呂市金山町金山2430-1

電話番号：0576-74-1249

営業時間：11:00～14:00/17:00～21:00

定休日：火曜日

駐車場：あり

予約：可能

今回は、飛騨金山の筋骨めぐりを中心に、歴史やグルメが楽しめるスポットを訪ねてみました。

紹介したスポットは、どれも飛騨金山駅から徒歩圏内。お散歩にもぴったりの距離感です。

探検気分で路地に一歩足を踏み入れたら、一気に昭和レトロな世界にタイムスリップできる飛騨金山の街。

このほかにも、"縄文人の巨石太陽カレンダー"と言われる「金山巨石群」や、"蛍石採取ツアー"が大人気の「笹洞鉱山ミネラルハンティングツアー」など気になるスポットが目白押し。

体験できるアクティビティが豊富で、ファミリーやお友達同士での行楽、カップルのデートで行っても楽しめること間違いなし！ぜひ遊びに行ってみてください。