【絶景!】幻の高級ギフト「伊自良大実柿」の連柿を見に、山県市伊自良地区へ
- 高橋 尚美

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伊自良大実柿で干し柿が作られるようになったのは、今から100年ほど前のこと。渋みの成分であるタンニンが多く生でかじると渋くてとても食べられませんが、干し柿にすることで絶品の甘さに! 年末の贈答品としても人気の高い、岐阜が誇るブランド干し柿です。しかし年々、生産者が少なくなり、今や幻の柿になりつつあります。

400年の間、伊自良地区にしか存在しない「伊自良大実柿」
まずはこの「オレンジ色のカーテン」をご覧ください!
家の軒先を埋め尽くす柿、柿、柿!山県市伊自良地区の北部では、伊自良大実柿の連柿を天日に当てて干し柿を作ります。伺ったのは、伊自良大実連合会の佐野敬二会長のご自宅。毎年、11月下旬になるとテレビや新聞で取り上げられているので、目にされたことのある方も多いのではないでしょうか。
整然と並んだ柿は、1万2千個! これだけの柿をすべて手作業で干し柿にしているそうです。伊自良大実柿の収穫は例年より2~3日遅かったそうですが、
「干し始めてからは乾燥した日が続いて良い仕上がり。今年は“なお一層”甘いよ!」
と佐野会長はニッコリ。
この伊自良大実柿は、岐阜県山県市の伊自良地区(旧伊自良村)の北部にしかない珍しい渋柿。400~500年ほど前に、滋賀県の近江地方から接ぎ木されて以来、伊自良地区で栽培されてきたと言われています。
私は季節ごとに伊自良湖までよくドライブしています。10月ごろ伊自良地区を通るときに見える、大きく実った伊自良大実柿に秋の深まりを感じます。柿の木の枝がしなるほど鈴なりに実ったオレンジ色の柿が、冷たくなった晩秋の風と少し低くなったお日さまに当たってキラキラ光る様子はまさに絶景!
伊自良大実柿はその名の通り実が大きく、縦長で先が細くなった「つりがね型」の渋柿です。渋みの成分となるタンニンが多く含まれていて、生では渋くて食べられませんが、干すことで渋みがなくなって甘みがぐっと出るのだそう。干し柿になると糖度は65度を超えるといい、ほとんどジャムと同じくらいの甘さになるというから不思議ですね。
高級ギフトにも!「連柿」ができるまで
スーパーに並ぶ干し柿は、パックや袋に詰めたものがほとんどですが、伊自良大実柿の干し柿は「連柿」として販売されています。この連柿を作る工程は、すべて手作業! 柿の実をひとつずつ手に取って丁寧に作られます。
皮を剥いた柿を3つずつ竹串に刺し、連なった柿を藁の縄で10段になるように編み込んだものが「1連」になります。佐野会長のところでは、2025年は1万2千個の柿を干しているということなので、400連の連柿が作られていることになります。
伊自良大実連柿が3つずつ竹串に連なっているのには理由があります。それぞれが「親・子・孫」を意味し、連なって子孫繁栄の願いが込められた縁起物と言い伝えられているのです。年末年始の贈答品として購入する方が多いというのも納得ですね。
ところで、干し柿の写真をよく見ると、ヘタの周りをぐるっと剥いた跡と実の部分にある縦の筋が分かるでしょうか? なるべく実を残すために、皮は専用のカンナを使い、ごく薄く剥いていくのだそう。機械では微調整が難しそうです。
佐野会長に専用のカンナを見せていただきました。このカンナ、地元伊自良に住んでいた今は亡きカンナづくりの達人によるもの。竹の持ち手に時計のゼンマイを使った刃を取り付けて作られているそうです。
市販のピーラーでは皮を薄く剥きにくいそうで、佐野会長はこのカンナを愛用しているとのこと。皮剥きをくり返すうちに、竹の持ち手がすり減って自分の手の平になじんでくると、いよいよ剥きやすくなる、と言いながら佐野会長は愛おしそうにカンナをなでていました。
連柿は家の軒下で3週間ほど乾燥させ、刷毛で表面にキズを付けて白い粉を吹かせます。仕上げは室内に運び入れて、ストーブを使って乾かしたら完成! 天日に干している間は、雨や雪が連柿に当たらないように空とにらめっこが続きます。伊自良大実連柿は、これだけの手間と時間をかけて大事に仕上げられた“伊自良の宝” と言ってもいいかもしれません。
完成した干し柿は、3つの柿を竹串に挿したまま、出荷用の藁で10段に編み直されます。価格は柿のサイズにもよりますが、10段なら7,000円台から8,000円台。半分の5段は5,000円前後で販売されています。
すべて手作業で大切に作られている伊自良大実連柿だからこそ、大切な方への贈り物としてふさわしい美しさと品のある風格が伝わってくるようです。
柿渋の魅力を伝える「柿BUSHI」
伊自良大実連柿は昭和20年ごろ、120軒ほどが作っていたそうですが、現在では7~8軒にまで減少してしまいました。伊自良大実柿の歴史においては、干し柿のほかに「柿渋」も作られていました。熟す前の青い柿で作った柿渋を「柿渋染め」に利用していたそうですが、残念ながら昭和後半に一度、途絶えてしまったそうです。
その柿渋が半世紀ぶりに人々の手によって復活したのは2016年のこと。復活した柿渋を用いた「柿渋染め」の職人として、伊自良大実柿の魅力を発信しているのが「柿BUSHI」の加藤 慶さんです。愛知県出身の加藤さんは、東京でのサラリーマン生活から一転、柿渋の魅力にひかれ柿渋染め職人に。伊自良へ移住し、地域おこしの活動や地元の人との付き合いを深めてきました。その人柄と実績が認められて、今や伊自良大実柿のスポークスパーソンとして欠かせない存在です。
工房には、柿渋染めの作品として、シャツ、エプロン、手ぬぐい、バッグ、靴など幅広いアイテムがディスプレイされ、購入できるものもあります。「柿BUSHI」では、柿渋染め体験、柿渋染め代行、商品販売を手がけていて、スポーツブランドの柿渋染めシューズはお客さんのリクエストがきっかけで誕生したものだとか。
染める工程で金属粉を混ぜて染めると、柿渋本来の色とは異なる風合いの色に仕上がるそうで、
「これがまた、時間の経過とともに色が変わっていくのを楽しめるんです。長くずっと楽しめるのが柿渋染めの魅力ですね」
と、加藤さん。おそらく日本で、いや世界で一番、柿渋染めについて熱く語れる方かもしれません。
柿渋染め体験は、年々人気が高まっていて、お話を伺った日は、毎年訪れるという常連の方が柿渋染め体験を楽しんでいました。カップル、女性同士のグループ、ファミリーなどの予約も多く、特に夏になると小学生の夏休みの工作の宿題として柿渋染めを体験にくる親子が増えるということです。
また、最近では海外から旅行で岐阜へやってくる方が体験されることも多いとか。日本の里山風景を眺めて、伝統文化を楽しむ旅はこれからも人気が高まりそうですね。
柿BUSHIでの柿渋染め体験は、オンラインで予約できます。詳しくは柿BUSHIのWEBサイトにてご覧ください。
伊自良大実柿と柿渋を守るために…
伊自良大実連柿が軒に吊るされた風景は、例年11月下旬から年末まで私たちの目を楽しませてくれます。しかし、この風景はショーアップした観光を目的としたものではないのも事実。干し柿を作っているのは一般家庭の軒先であり、観光専用の駐車場やトイレもありません。
今回の取材に協力してくださった、伊自良大実連合会の佐野会長と柿BUSHIの加藤さんは、お二方とも伊自良大実柿の魅力を多くの人に伝えながら、これが途絶えないように大切に守っています。無断で民家の敷地へ立ち入ることや、公道に車を停めたまま写真を撮りにいくようなことはくれぐれも控えて、マナーを守って伊自良の旅を楽しんでくださいね。
伊自良に行ったらココ!定番スポット〈2選〉
伊自良大実柿の連柿を見て、柿BUSHIで柿渋染めを体験して、もっと伊自良を楽しみたい!という方に、ぜひ訪れてほしい場所があります。
ここからは、柿BUSHIからおよそ2kmほど西にある伊自良に行ったら外せない定番スポット、ワカサギ釣りで知られる「伊自良湖」と見どころ満載の古刹「甘南美寺」をご紹介します。
ワカサギ釣り・ボート遊び・BBQを楽しめる「伊自良湖」
2024年に伊自良湖FISHING ADVENTURE PARKとして、レジャースポットへと大リニューアル! 定番のワカサギ釣りやボート遊びだけでなく、子どもと一緒に楽しめるアクティビティも増え、1年中楽しめるようになりました。
伊自良湖の魅力といえば、やっぱり釣りの楽しみですね。湖上でワカサギやオイカワを狙うか、ボート乗り場の桟橋から陸釣りか、はたまた伊自良湖の源流、釜ヶ谷(かまがたに)の浅瀬でアユのつかみ取り? 初心者もベテランも夢中になりますよ。
伊自良湖と源流の釜ヶ谷で釣り三昧
●アユのつかみ取り(5月中旬~9月下旬)
●ワカサギ釣り(9月中旬~5月中旬)
●オイカワ釣り(5月中旬~10月下旬)
●アマゴ釣り(通年) ※いけす釣り
もちろん、釣り以外にも大自然に囲まれた伊自良湖ならではの遊びがいろいろ。キャンプやバーベキュー、焚き火をワイワイ楽しむのもいいですね。
友人と!家族と!楽しいアクティビティ
●キャンプ ※バンガロー3棟の貸切パックも。
●バーベキュー ※手ぶらでOK!持ち込みパックもあります。
●焚き火
料金や予約方法については、伊自良湖FISHING ADVENTURE PARKの公式サイトでご覧ください。
伊自良湖のほとりには、釣りやボート遊び、アクティビティの受付カウンターとカフェの建物があります。伊自良湖の愛称「ラブレイク」からとった、カフェ ラブレイクには伊自良湖限定のフードメニューが揃っています。
人気メニューは「ピンク担々麺」と「ピンクバターハヤシライス」。
ピンク担々麺は、淡いピンク色をしたとんこつベースのスープに台湾ラーメンを彷彿とさせる「台湾ミンチ」がのっています。まろやかな味わいのスープに台湾ミンチのアクセントがピリッと効いています。
ハヤシライスのルーは、山県市内にお店を構えるビストロ サングリエ「久助」製。ハヤシライスの発祥は、明治時代のこと。山県市にゆかりのある医師であり実業家の早矢仕有的(はやしゆうてき)氏が考案したと言われています。
ほかにも山県市産の米を使った「米粉の高山ラーメン」、マシュマロであしらったしろくまの顔がキュートな「しろくまフロート」、伊自良クラフトコーラなど、あれもこれも気になってしまうメニューばかり。グループで行って少しずつシェア?何度も通って少しずつ制覇?……悩ましいところです。
彩り美しい花手水、午年にちなんだ色紙、オリジナル御朱印も「甘南美寺」
伊自良湖のすぐそば、山麓に建っているお寺は臨済宗妙心寺派寺白華山(はっかさん)「甘南美寺 」(かんなみじ)です。約500年ほど前に今の場所に建てられたのだそう。江戸彼岸桜(えどひがんざくら)、あじさい、紅葉、雪景色――と四季の美しさを楽しむことができます。
ご本尊は千手観世音菩薩(せんじゅかんぜおんぼさつ)ですが、甘南美寺は馬頭観世音菩薩(ばとうかんぜおんぼさつ)のお寺としても知られています。奇しくも来年の2026年は「午年」ということで、干支にちなんだ色紙〈下の写真〉も用意されているそうです。縁起担ぎにお参りしてみてはいかがでしょうか?
甘南美寺では、御朱印をいただくことができます。七福神や紅白のだるまが描かれた縁起の良い御朱印〈下の写真〉のほかにも、季節ごとの絵入り御朱印もあります。また、不定期ですが手水にフラワーアレンジメントをほどこした花手水も見どころ。最新の情報は、ぜひ甘南美寺のFacebookやInstagramでチェックしてみてください。
伊自良大実連柿は、柿BUSHIやJAのオンラインストア、山県市伊自良地区の農産物直売所で販売されています。生産数が少なく手に入りにくいですが、伊自良の旅の途中で直売所へふらっと立ち寄ってみると出合えるかもしれません。ゆたかな大自然がもたらす風景と幻の伊自良大実連柿を求めて、お出かけしてみてはいかがでしょうか?























































