新緑と白川茶の香り!美濃・白川のグルメ、見どころ、体験で大満足の日帰りドライブ
- 高橋 尚美
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岐阜県の白川町や東白川村では、5月になると銘茶「美濃白川茶」(以下、白川茶)が新茶シーズンに入ります。山の斜面にそって連なる茶畑は、初夏の日差しを受けて緑色に輝き、私たちの目を楽しませてくれます。
今回は、白川茶のルーツをたどって茶畑の景色や白川茶グルメを楽しむ日帰りドライブへ!車の窓を開け、ひんやりとした風を感じながら、美濃・白川の「白川茶スポット」を巡ってきました。

美濃白川茶「発祥の地」は2カ所ある!
今回のドライブは「白川茶」のルーツをもとめようと考えました。「発祥の地」について調べてみたところ、なんと2カ所あるのだそう!
ひとつは「白川町」の大山白山神社。白川町公式ウェブサイトによると、
奈良時代の宝亀年間(770~780年)に美濃国大山白山神社を創設した泰澄大師が仏都である京都からの帰途、山城国の白山神社地蔵院に立ち寄りお茶の種子を持ち帰って現在の白川町広野の里人に呼びかけ栽培されたのが白川茶の始まりと伝えられています。
とされています。
そして、もうひとつは「東白川村」の五加地区にあった「蟠龍寺(ばんりゅうじ)」です。東白川村公式サイトには、
白川茶の起源は約600年前(450余年前との説もあります)、旧大沢村蟠龍寺(おおさわむら ばんりゅうじ)の住職が、山城国宇治から茶の実を持ち帰り、里人に茶の栽培を勧めたのが始まりと言われています。
と書かれています。
どちらが正しいのか、どちらを信じたらいいのか?迷ったときには「どちらも行ってみるしかない!」というわけで、「白川町」と「東白川村」のそれぞれに伝わる「発祥の地」に向かうことにしました。
美濃・白川の玄関口「白川橋」
旅のはじまりは、美濃・白川の玄関口「白川橋」から。白川沿いの町営小原駐車場に車を停めて、歩いて見に行きました。
白川と飛騨川が合流する地点にかかる吊り橋で、大正15年にできたのだそう。橋のデザインは欧米風で、完成当時には「ハイカラ」な吊り橋として、多くの注目を集めていたのでしょう。橋は徒歩か二輪車で渡れます。橋の向こう側にはJR高山本線「白川口駅」があります。
白川橋は、床材が木からコンクリートに変わったほかは当時のままで、その歴史的価値から平成18年に「土木遺産」に認定されています。
橋の全体像を見るには数十メートル下流にかかった「飛泉橋」の付近、「ようこそ!美濃白川へ」の案内板の近くがおすすめです。取材で行った日にはまだ桜が咲いていて、白川橋の美しい形を彩るように淡いピンク色が川面に照り映えていました。
「道の駅 美濃白川ピアチェーレ」
白川橋をあとにして、国道41号線を高山方面へドライブすること約8分。見えてきたのは「道の駅 美濃白川ピアチェーレ」です。
お土産コーナーには「美濃白川茶」づくしの一角があります。紙コップに注がれた試飲の白川茶を片手に、白川茶をお土産に買い求める人や奥の休憩スペースで旅の疲れを癒している人を見かけました。
ここで、ふと目を向けた先に「白川茶のつかみ取り」が!お店のスタッフさんに聞いてみると「普段は製茶の仕事に就いていますが、時間を見つけて“たま~に”催している」のだそう。実にラッキーなタイミングで来店したようです。
さっそく、白川茶ティーバックのつかみ取りに挑戦!
手のひらを目いっぱい広げてつかみ取ったティーバックは200グラム。果たして、これは多いのか?少ないのか?「たくさんつかめましたね!」というスタッフさんの言葉を信じることにしましょう。
お土産コーナーを出て、カリヨンベルの下で見つけたのは「菊之園」さんのお店。
創業明治40年という老舗お茶屋さんの店先には、最近の画風で描かれたイラストのパネルが立てられています。センターの女子と後ろの男子2名は、菊之園で活躍する「お茶の精霊」なんですって。「おっちょこ茶いの精霊のお姫様」に、「甘いもの好きの茶ら男」と「料理が得意!なお茶れ」男子。“ダ茶レ”満載のキャラクターが気になる方は、ぜひ「菊之園」さんへ。
店舗の奥では「お茶屋のソフトクリーム」を販売しています。店内いっぱいに広がる茶の香りに誘われて、「オリジナル抹茶ソフトクリーム」を購入し、お店の外に出て「いただきます!」抹茶の風味を感じ、あっさりとした食感は、これからの暑い季節にも合いそうです。
ソフトクリームを手に駐車場のほうへ向かうと、左手にパイプオルガンのレプリカがありました。白川町町民会館には、パイプオルガンが2台設置されているそうです。オルガンビルダーの故辻宏さんが、ここ白川町に移住して工房をもったのがご縁なのだとか。レプリカなので音は出ませんが、鍵盤にそっと指を置いてみたくなるパイプオルガンでした。
そして、パイプオルガンの横には、またもや美味しそうなものを売っているお店を発見!こちらの「茶粉(ちゃこ)ちゃんのおうち」では、白川茶のスイーツや五平餅、飛騨牛コロッケなどを販売しています。
メニューの中で気になったのは「美濃白川 抹茶アフォガード」。いただいてみると、抹茶ソースのほろ苦さがソフトクリームによく合って、ほんの数分前に抹茶ソフトクリームを食べたことも忘れ、あっという間の完食でした。
「美濃白川お茶街道」
さて、次の目的地へ向かいましょう。道の駅 美濃白川ピアチェーレを出て、国道41号線を7分ほど走り飛騨川にかかる「坂東橋」を渡ったところで、JR高山本線の電車に遭遇しました。踏切を超えて「美濃白川お茶街道」を進みます。
白川茶の育つ白川町や東白川村は標高が高いところが多いため、一般的な日本茶の茶摘みシーズンよりも少し時期が遅くなります。取材した日は、まだ桜が咲いていてお茶の新芽が出そろうのはもう少し先かなという印象でした。5月に入れば、明るい黄緑色の茶葉があたり一面に広がっていることでしょう。
「美濃白川お茶街道」では車の窓を開けて、ひんやりとした風を感じながら山道ドライブを楽しんでください。
しばらく走ると、右側に「大山白山神社」の案内板が現れました。ここからは細くて急な山道を慎重にドライブします。
白川町の白川茶発祥は「大山白山神社」
木立の間を慎重に進むこと約3キロメートル。見えてきたのは養老2年(718年)に創建された「大山白山神社」の大鳥居です。手前の駐車場に車を停めて、大鳥居をくぐって長く急な階段に挑みます。石段を上る際は、歩きやすい靴を履いていくことをおすすめします。
息が切れては少し休み、また階段を上っては息が切れ、を繰り返すこと3回(※個人差があります)で拝殿にたどりつきました。大きくて立派な拝殿には「絵天井」があり、あざやかな色彩で描かれた松、鶴、唐獅子、亀といった絵が見どころです(観覧は要予約)。
ちょっとした達成感も束の間、さらに上にある本殿を目指して石段を上っていきます。
拝殿の右側に立っている鳥居の先には、まだまだ長い石段が続きます。
ゴツゴツした石段は少し足元が心配だったので、その横の整備された石段を上っていきました。「晴れた日には頂上より連山が望めます」という看板に励まされながら、3分の2ほど上ると左側に「大杉」がそびえ立っていました。
大杉は昭和18年に国の天然記念物として、また昭和47年には白川町の天然記念物として指定されています。
標高862メートルのこの場所で、長年の風雪に耐えて空に向かって伸びるその神秘的な佇まいはまさに霊木といった印象。太い幹に体を預けてみると、ひんやりとした皮の感触の奥に生命の力強さと温かみを感じられます。息を切らしてここまで上ってきてよかった!と思える瞬間でした。
頂上の景色まで、もう少し!頑張って上っていきます。
ようやく石段を上りきったところに「加賀の白山、木曽御岳、乗鞍岳が望めます」の木札がありました。
本殿の裏側へ回ると見晴らしの良い景色が広がりました。うっすらと汗ばんだ背中にさわやかに吹き抜ける風が気持ち良いことといったら!
木立のなかから「ほ~ほけきょ」とウグイスの美しい鳴き声も聞こえ、大きな達成感に浸ることができました。
一説には、この大山白山神社を創建した泰澄大師が京都からお茶の種を持ってきて、白川の人々に栽培を勧めたのが白川茶のはじまりと言われています。白川茶の風味と頂上で見た素晴らしい景色には、どこか「さわやかでスッと胸が落ち着く」ところが似ているように感じました。
「美濃白川お茶街道」その2
まだまだドライブは続きます。
大山白山神社を下りて、再び「美濃白川お茶街道」へ戻り、東白川村を目指します。
「CROCE season2」でちょっと一息
大山白山神社で石段を上った疲れとお昼時を過ぎたところで、おなかがグ~。
そこで、茶畑から少し離れてカフェに立ち寄って休憩をしました。
「CROCE season2」は、まさに天空のカフェ。東白川村の大自然のなかで地元の食材をふんだんに取り入れた食事を楽しむことができます。
店内でゆったり腰かけるもよし、ウッドデッキの席(有料)で大自然を感じながらゆっくり過ごすのもよし。
ランチタイムを少し過ぎていたので、季節限定の「いちごのクリームチーズパンケーキ」とオープンサンドの「サバのリエットとレモンハーブのタルティーヌ」をいただきました。ふわふわのパンケーキで疲れは吹き飛び、オープンサンドで栄養バランスもばっちり。どちらのお味も大満足でした!
「道の駅 茶の里東白川」
東白川村の白川茶発祥の地を訪ねる前に「道の駅 茶の里東白川」へ立ち寄りました。
東白川村といえば、「つちのこ」も有名ですね。例年、5月3日に開催される「つちのこフェスタ」には、全国各地から「つちのこファン」が集います。
店頭で目を引いたのが「たべるお茶プリン」。気になったので、中へ入ってみることにしました。
店内には「茶農家のまかない茶」とネーミングされたお茶のコーナーがあり、お茶の詰め放題がありました。
スタッフの方に手渡された茶筒に白川茶を詰めていきます。「台の上で筒の底をトントン叩くとお茶が詰まってたくさん入りますよ」というアドバイスをいただき、丁寧に丁寧にトントン叩いてぎっちりお茶を詰め込みました。
スタッフの方も感心するほどの密度で詰め込んだ白川茶を袋に入れ替えていただいてお土産にしました。
次は、お店の入り口で気になった「たべるお茶プリン」のコーナーへ。
レジ横に置かれたショーケースに並ぶ、バラエティに富んだプリンの品々は、ここ東白川村で生まれた東白茶寮(とうはくさりょう)さんの商品。ひとつずつ丁寧に焼き上げているというプリンは、濃厚な口当たりと白川茶のおいしさが詰まった絶品白川茶スイーツと言えるでしょう。
保冷剤を入れてくれるので、お持ち帰りもOK。大切な方へのギフトに、頑張った自分へのご褒美に、じっくり味わって食べたくなるプリンです。
お茶処の暖簾に見送られて、いよいよ東白川村の白川茶発祥の地へ。
白川茶発祥の地、古民家で一服できる「Gifuto」
道の駅 茶の里東白川を出発して、国道256号線を西に向かって15分ほど。道の右側、山沿いに見えてきたのは、四角い黄色の看板に一文字ずつ黒色で書かれた「白川茶発祥の地」の看板です。
その看板の前には、古民家をリノベーションしたカフェがあります。千葉県から移住してきたというオーナーさんは、古本屋を営みながらカフェを切り盛りしています。日本茶インストラクターとしての顔をもち、白川茶を急須で入れておもてなししてくれました。付け合わせの菜の花は古民家の周りで摘んだもの。オーナーさんが炊いたつぶあんでつくったぜんざいは、豆のほくほく感と控えめな甘さが素朴な懐かしさを感じました。
カウンターに並ぶのは、文豪の有名な一節をあしらった白川茶。煎茶に川端康成、玄米茶に夏目漱石、ほうじ茶に太宰治の一節が充てられ、和紅茶にはサリンジャーがセレクトされている点もお見事!読書家に人気で、書店でよく売れているとのことでした。普段、気にしたことがなかったのですが、お茶と本の相性は案外、良いものかもしれませんね。
最後の目的地、東白川村の白川茶発祥の地へ向かう前に、店内に並んだ古本の背表紙を眺めながらゆったりとした空間で静かに過ごして心を落ち着かせることができました。「Gifuto」は、金・土・日の営業です。
東白川村の白川茶発祥は「蟠龍寺(ばんりゅうじ)跡」
いよいよ、最終目的地へ。
「Gifuto」のオーナーさんが駐車場に車を停めておくことを許可してくださったので、カフェを出てそのまま店の裏へ。山の斜面を歩いて上ると「「蟠龍寺(ばんりゅうじ)跡」が見えてきました。この蟠龍寺の住職が、山城国宇治(今の京都)から茶の実を持ち帰って里人に与えたのが白川茶の始まりと伝えられています。
ここもまた、急な石段を上らないとたどり着くことができません。気持ちと体力を振りしぼって、一歩一歩、石段を上っていきます。
お日さまも西へ傾きかけて少しオレンジ色に染まり出した頃、もうひとつの発祥の地へ到着しました。
到着しました!眼下に広がる東白川村の茶畑は、これぞ日本の原風景。
柔らかな春の西日が、この日帰りドライブ旅のエンディングを迎えるのにふさわしい色合いでした。急な山の斜面に植えられた茶畑には大きな機械が入ることができず、茶摘みも手入れも手間がかかります。白川茶の風味は、長年、人の営みによって整えられてきた、美濃白川の人々のかけがえのない宝物だと確信しました。
まとめ(ドライブルート)
今回のドライブルートを振り返ってみます。
A 白川橋 → B 道の駅 美濃白川ピアチェーレ → C 美濃白川お茶街道 → D 大山白山神社 → E CROCE season2 → F 道の駅 茶の里 東白川 → G Gifuto、蟠龍寺(ばんりゅうじ)跡→ H 白川口トンネル
滞在時間はおよそ6時間。少し早めに見て回ったので、じっくり楽しみたい方は A から D の「白川町コース」と E から G の「東白川コース」の2パターンに分けてドライブしても良いかもしれません。
これからピークを迎える新緑の季節、白川茶の香りと目にあざやかな茶畑の風景を楽しんでみてはいかがでしょう?