岐阜・恵那で“日本一”に出会う旅 | ダム、山城、水車、そして体にやさしい地元ごはん
- 長月あき
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恵那峡を生み出した日本一古いダム式発電所「大井ダム」
四季折々の風景を遊覧船で楽しめる恵那の人気スポット「恵那峡(えなきょう)」。この美しい渓谷は、大正時代に建設された日本初の発電専用ダム・大井ダムによって誕生した人造湖です。大井ダムは、恵那峡遊覧船乗り場周辺から、車で約10分の場所にあり、昨年、完成から100年を迎えました。今も変わらず電力を生み出し続けているダムは、駐車場や遊歩道が整備されているので、自由に見学ができます。重厚な造りのダムは「近代化産業遺産」に認定されており、レトロな趣が感じられました。
大井ダムと、併設の大井発電所は、日本の電力界をけん引した福沢桃介(福沢諭吉の養子)によって手がけられたもので、恵那峡県立自然公園内からは、彼の銅像が今も大井ダムを見つめています。
昨年は100周年を記念した特別事業として、大井ダムの「ダムカード」が恵那峡ビジターセンターで配布されていました。記念事業は今年5月で終了しましたが、カードは在庫がある限り、 引き続きいただけるようです。私も一枚もらってきました。
恵那峡を訪れた時は、ぜひ大井ダムにも足を延ばしてみてくださいね。
日本一高いところにある城「岩村城」跡
日本三大山城のひとつとして知られる「岩村城」。標高717メートルという、日本一高い場所に築かれた山城です。
築城は鎌倉時代。そこから、明治の廃城令でその役目を終えるまでのおよそ700年にわたり、城の歴史は続きました。岩村城といえば、まず印象に残るのが石垣です。中でも「六段壁(ろくだんへき)」と呼ばれる石垣は、山の傾斜に合わせて6段に積み上げられており、その姿はまるで石のひな壇のよう。ほかにも、石垣の石の積み方に、時代による違いを見ることができるのも、長い歴史を持つ、この城ならではの見どころです。自然の地形を生かして築かれた石垣からは、長い年月そこに佇み、時代の流れを静かに見守ってきた風格のようなものが感じられます。山の上に、これほどの規模の石垣が残っていることにびっくり。
本丸近くまでは車で行くこともできますが、できれば岩村歴史資料館から山道を歩いて登るルートがおすすめです。資料館から本丸跡までは、およそ30分ほどの道のりです。私は体力にはあまり自信がないため、途中で休憩を挟みつつ、自分のペースでゆっくり登ったのでもう少し時間がかかりましたが・・・。山の中腹から続く石畳の道は、江戸時代の岩村藩主が整備されたものとされ、当時、武士たちが実際に通った道です。木々に囲まれたその道の、沿道に残る城の遺構のひとつひとつが、遠い時代の記憶を今もこの場所に留めていることを感じさせてくれます。 たどり着いた本丸からの眺望はすばらしく、山城ならではの絶景も見応えがありましたよ。
なお石畳なので、雨の日の翌日などは下山の際にご注意を。特に雨のあとの下山では、足元がとても滑りやすいです。私は、以前訪れた際に足を滑らせて転倒し、カメラを壊してしまった苦い経験があります。歩きやすい靴で慎重に歩いてくださいね。
岩村城を訪れた際には、城下に広がる岩村本町通りの散策もぜひおすすめです。ここは「重要伝統的建造物群保存地区」にも指定されており、江戸時代の風情を色濃く残す町並みが続いています。酒蔵や古民家カフェなども点在しており、城の歴史を感じたあとの散策にぴったりのエリアです。
中山道・大井宿の老舗「旅館いち川」で癒やしのマクロビランチ
恵那駅から歩いて5分ほどの場所にある「大井宿」は、中山道46番目の宿場町。江戸時代には美濃の宿場のなかでもっとも賑わっていたとされ、当時は41軒もの旅籠が軒を連ねていたのだそうです。
その大井宿の中で、今もなお歴史を引き継ぎながら営業を続けているのが「旅館いち川」。 約400年前に旅籠「角屋」として創業し、時代を越えて今日まで、訪れる人をあたたかく迎え続けている老舗の旅館・料亭です。江戸時代の宿場町に数多くあった旅籠の中で、絶えることなく現在まで営業し続けている日本最古級の旅籠なのだとか。建物自体は昭和期に再建されているそうですが、格子戸や黒塀といった外観には、宿場町らしい風情がしっかりと感じられます。
「老舗旅館」と聞くと少し敷居が高く感じられるかもしれませんが、実はこちらでは、日帰りランチがとても気軽に楽しめるんです。私がいただいたのは、地元の食材をふんだんに使った「マクロビオティックらんち 」。地元の食材をふんだんに使った前菜、小鍋、揚げ物、玄米ご飯にお味噌汁、そしてデザートまでついた大満足の内容でした。どのお料理も素材の味を活かした優しい味つけで、一品一品が印象に残るおいしさ!
“身土不二(しんどふじ)”=「人の身体はその土地のものと切り離せない」という考え方に沿って、地元の食材が丁寧に料理されています。口に運ぶたびにほっとするような味わい。改めて気づいたのですが、マクロビオティック料理のコンセプトと、静かな和空間の組み合わせって、すごく調和するんですね。
さらに心に残ったのが、女将さんと若女将さんのおもてなし。気さくににこやかに話しかけてくださり、その距離感がとても心地よく感じられました。今回はひとりでのんびりランチを楽しみましたが、静かで落ち着いた個室でゆったり味わうお料理と、丁寧なおもてなしにすっかり癒やされました。次は友達を誘って、女子旅で再訪したい!
日本一の木製水車を有する大人気の道の駅「道の駅 おばあちゃん市・山岡」
週末になると、駐車場がいっぱいになるほど賑わう、大人気の道の駅「おばあちゃん市・山岡」。この道の駅のシンボルが、直径24メートルという日本最大級の木製水車です。ゆっくりと水しぶきをあげながら回転する様子は、迫力があり思わず見入ってしまいます。この水車は、2004年の小里川(おりがわ)ダム完成に合わせて設置されたものです。かつてこの地域には多くの水車があり、陶石を砕くなどの作業に使われていたそう。ダム建設で水没した、そうした地域の記憶や産業の歴史を受け継ぐため、産業遺産のシンボルとして造られたのが、この巨大な木製水車なのだとか。
水車のすぐ下には、大正時代に造られた與運橋(ようんばし)という三連アーチの石造りの橋があります。当時、小里川第三発電所へ向かうために使われていた橋が、移設・保存されたもので、水車とともに趣のある景観をつくっています。
道の駅「おばあちゃん市・山岡」には、私も食事と手作り惣菜目当てに何度も訪れています。特に、道の駅の中にある食事処「みはらし茶屋」でいただける、地元産の野菜や季節の山菜などを使った定食はおすすめです!写真は去年いただいた季節限定の「栗おこわ定食」。他にもその時期に応じた季節限定の定食があるので、ぜひチェックしてみてください。また、山岡名産の寒天スイーツもいただけます。カラフルな寒天パフェは、シャリッとした琥珀糖の食感とソフトクリームの組み合わせが楽しい。トッピングされている、塩麹入りのクッキーは「水車」をイメージしているんだそうです。
沿線は“日本一”の宝庫?明知鉄道
恵那駅から終点・明智駅まで、全長25.1km、全11駅をつなぐローカル線「明知鉄道」。のどかな田園や山あいをぬって、ことこと電車が走るこの路線には、実は“日本一”がいくつもあるんです。
まずは、日本一急勾配にある駅「飯沼駅」
恵那駅から2駅目の「飯沼駅」は、日本で一番勾配が急な場所にある普通鉄道の駅です。鉄道の設置基準では勾配は5‰(パーミル)が上限とされているのに対し、ここは33‰(1kmで33mの高低差)という急斜面。特例で設置が認められた、全国でも非常に珍しい駅なのです。ホームに降り立つと、身体が少し傾いて感じられます。鉄道好きはもちろん、ちょっと変わった“体感スポット”としても面白いかも。
農村景観日本一が広がる「飯羽間駅」
飯沼駅からさらに2駅目の「飯羽間(いいばま)駅」は、平成元年に「農村景観日本一」という称号を与えられた、恵那市富田地区の最寄り駅です。駅から歩くには少し距離がありますが、3キロほど離れた場所に、日本一の農村景観を一望できる「農村景観日本一展望所」があります。展望所から見下ろす景色は、ただ美しい田園風景というだけでなく、どこかのんびりした風情と懐かしさを感じるような景観です。
日本一の細寒天産地「山岡」で寒天体験
さらに列車で4駅進むと「山岡駅」に到着します。この駅に併設されているのが、寒天のの魅力を広く発信する施設 「食と健康のステーション 山岡駅かんてんかん」です。実はここ山岡町は、日本一の細寒天の生産地として知られています。「 海のない岐阜県でなぜ寒天?」と疑問に思われるかもしれませんね。その秘密は山岡特有の気候条件にあります。山々に囲まれたこの地は、冬は乾燥し、朝晩にぐっと冷え込み、日中には気温が上がるという寒暖差の大きな気候が特徴です。 食物繊維豊富でノンカロリーの寒天はぜひ日々の食卓に取り入れたい健康食品。 寒天資料館(入館無料)には、寒天の歴史や製法を学べるだけでなく、寒天を使ったメニューが味わえるレストランも併設されており、体に嬉しいヘルシーランチが楽しめます。
そして、これまでにご紹介したうちのいくつか・・・
・「岩村城跡」は岩村駅から徒歩1時間程度(登城口までなら30分程度)
・「旅館いち川」は恵那駅から徒歩5~10分程度
・「道の駅おばあちゃんの市」は山岡駅からバスで15分程度
…と、これらは、明知鉄道で訪れることができるスポットです。
のどかな風景を眺めながら、“日本一”が点在する沿線をゆったりと旅する――。そんなローカル線の旅もいいかもしれませんね。
恵那で見つける、ゆるっと“日本一”
自然にふれて、歴史を感じて、体にやさしいごはんで心もほぐれる——。岐阜・恵那には、そんな“日本一”との出会いが、日常のすぐそばにあります。今度の休日はふらっと恵那の“日本一”に会いに行ってみませんか?