地元レポーター発!旅のコラム

飛騨川が刻んだ渓谷美に出会う旅|遠見山・飛水峡ロックガーデン

高橋 尚美
高橋 尚美
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下呂温泉や飛騨高山へ向かう途中、何度も目にする飛騨川。JR高山本線の電車からも、国道41号を走る車からも、その美しい景色を楽しむことができます。けれど、ただ眺めて通りすぎるだけではもったいない! 白いしぶきが上がる飛騨川の激しい流れと水の力が作り出した渓谷の美しさを間近で感じてみませんか?

今回は、飛騨川が刻んだ渓谷美に出会う旅へ出かけましょう。 “岐阜のグランドキャニオン”と呼ばれる「遠見山」(とおみやま)からの眺望を楽しみ、飛騨川の激しい流れが生み出した岩の造形美が広がる「飛水峡ロックガーデン」を訪ねました。

近くで見たい!「飛騨川」

飛騨川は、岐阜県北部の飛騨地方から南へ流れ、木曽川へと合流する川です。下呂温泉や飛騨高山へ向かう国道41号やJR高山本線に沿って流れ、旅の途中で何度も目にする機会があります。


ですが、実際のところ、仕事での移動や休日に家族で出かける時など、私も飛騨川のそばを何度か通っていても、時間をかけてゆっくり眺めたことはありませんでした。


――いつか、ごつごつの岩場に立って飛騨川の美しさを間近で感じたい!


酷暑が少しだけ和らいだ8月の半ば、この長年の思いを果たすために飛騨川を目指して国道41号を北上しました。

岐阜のグランドキャニオン「遠見山」

  • 馬の蹄鉄(ホースシュー)に似た地形
  • 登山口から見晴らし岩を見上げる

まずは飛水峡の手前、川辺町の遠見山(とおみやま)から飛騨川を眺めます。

標高272メートル、登山口から山頂までは約30分ほどの道のりです。


遠見山の魅力といえば、頂上近くにある見晴らし岩からの眺め。 U字に蛇行する飛騨川と、それに沿って切り取られたような大地の姿は、馬の蹄鉄(ホースシュー)を思わせます。アメリカの「ホースシューベント」を連想させることから、「岐阜のグランドキャニオン」とも呼ばれています。

 

 

低い山でも油断は禁物! 

  • クマらしきものの目撃情報も…。登山の際は、十分に気をつけて!
  • 登山の入口にある、高さ170センチくらいの小さなトンネル。この上をJR高山本線が走っています
  • 己の膝が笑うのか? 息の上がった情けない姿を山の神が笑うのか? 笑う余裕もなく必死に上を目指す(※個人差があります)
  • うれしくて看板の先に目を向けると、まだまだ無常に続く斜面が立ちはだかっていました…(※個人の感想です)

標高300メートルもなく、短い時間で登れるからといって油断は禁物です。登山口からスタートしてまもなく、急な傾斜が始まります。登山道は丸太階段や補助ロープなどで整備されていますが、うねるように這う木の根っこや滑りやすい岩の上を歩くところも。滑りにくい履きなれた靴とロープにつかまりやすい軍手があると安心です。

 

この日、遠見山に登り始めたのが昼すぎだったこともあり、序盤から思った以上に体力を消耗しました。事前に調べていた情報で、山頂へ向かう途中には、いくつか案内板が立てられ、クスッと笑えたり励まされたりするはずでしたが、私にその余裕はまったくありませんでした……。

 

それでも懸命に一歩ずつ前に足を進め、息の上がった体を休ませながら、最後の坂を上りきったところで視界が一気に開けます。目の前の案内板には、左へ行けば「見晴らし岩」、右へ行けば山頂と「城池」「秋葉神社」と書かれていました。飛騨川を眺めるため「見晴らし岩」を目指して、もう少し歩きます。


山の斜面では感じなかった風が吹き、汗ばんで熱を帯びた体に心地よく、すぐそばでツクツクボウシも鳴いていました。



いよいよ、見晴らし岩へ!

看板に向かって左側へ、なだらかな道を進むとその先に「見晴らし岩」が現れます。岩の向こうに広がる景色こそが「岐阜のグランドキャニオン」です。


急斜面を息も絶え絶えになりながら登ってきて、ようやく見ることができたこの景色。疲れがピークで足がぶるぶる震えていたので、よじ登るように這いつくばって岩の上から撮った動画がこちらです。

ホースシューベントに似たU字の地形に沿って流れる飛騨川。

雲におおわれた空の下、穏やかな深い緑色の流れは川を縁取る濃い緑の木々と溶け合うようなグラデーションを見せてくれました。


川沿いの先には、金色の穂をつけはじめた田んぼが広がり、ところどころ薄日が差し込んでキラキラと輝いていました。


山中では、若い2人組が私を追い越していったのですが、彼らも見晴らし岩の手前にある岩に腰かけて、飛騨川が造り出した「岐阜のグランドキャニオン」をじっと眺めていました。昼下がりで夏の登山には向いていない時間帯だったかもしれませんが、順番待ちをすることもなく、お互いにほどよい距離感を保ちながら景色を楽しむことができました。

復活の一杯!「平和錦酒造」の冷たい甘酒

  • 疲れた体に麹の甘みが染みわたります
  • 30年以上にもなる古酒もずらりと並ぶ店内
  • 店の奥には、時代を感じる茶箪笥や火鉢がありました

遠見山からの下山は、上りに比べれば夢のように楽な道のりでしたが、それでも急斜面や滑りやすい岩を慎重に歩き、登山口に戻ってくると足がぶるぶる震えていました。


町営駐車場に戻って、向かいの「平和錦酒造」へ。予想以上に疲労困憊していたので、冷たい甘酒をいただきました。

氷を浮かべた甘酒の美味しかったこと! この日ほど“飲む点滴”を実感したことはありません。


天然麹たっぷりの無添加で、ノンアルコールなのでどなたでも安心して飲むことができます。温かい甘酒もあります。


* * *


平和錦酒造は、嘉永3年(1850年)創業の老舗蔵元です。江戸時代から使われている土蔵蔵の酒蔵見学(予約制)もおすすめです。店内では試飲もできるとのこと。


飛騨川の伏流水に恵まれている川辺町で、江戸時代から170年以上で続いてきた伝統の酒造りを感じてみてはいかがでしょうか。


飛水峡ロックガーデン

  • 長い年月をかけて造られた渓谷に力強さを感じる
  • 雨の日が少なかったからか、水の流れは控えめでした
  • 下呂温泉や飛騨高山へ向かう特急「ひだ」

さて、体の疲れも癒えたところで、少し上流にある「飛水峡ロックガーデン」を目指します。遠見山から約6キロ、車で6分ほどの距離にあります。

 

飛騨川に沿ってJR高山本線が通っていて、電車からも飛水峡の絶景が見られます。実際、特急「ひだ」の車窓から、飛水峡を収めようとスマホのカメラを向けている人々の姿を見ることができました。

 

 

車のすれ違い注意!細い道の先へ… 

国道41号の川並交差点から赤い上麻生橋(かみあそうはし)を渡ると、つきあたりに「飛水峡ロックガーデン」の案内看板があります。


車同士がぎりぎりですれ違えるかどうかの細い道を飛騨川の上流に向かって進みます。途中、JR高山本線の踏切を一度横断し、再び踏切が現れたらここでは横断せずに線路に沿って直進すると「飛水峡ロックガーデン」の駐車場があります。


とにかく道が細いです。特に、夏は道の両脇の草木も生い茂っていて、よりいっそう道幅が狭く感じます。実際、対向車もいないのに脇から伸びていた木の枝で車体の横をこすりました。

 

それでも、飛水峡ロックガーデンを間近で見たい!という一心で、草むらのような砂利道を進むと、原っぱのような駐車場が現れました。

 


草むらの先に広がる絶景

  • 展望台から眺めた飛水峡
  • ロックガーデンに下りてみたところ
  • 飛騨川の上流方面に、JR高山本線の鉄橋が架かる
  • 水量が少なく、ごつごつの岩肌が強調されていた
  • ロックガーデンの片隅に咲いた夏の面影

駐車場は、車が10台ほど停められそうな十分な広さでした。その奥は白いコンクリート造の展望台があり、階段を上ると建物の2階相当の高さから飛水峡ロックガーデンを一望できます。でも、せっかく来たのなら岩場にも下りてみたい!ということで、駐車場のそばにある階段で岩場へ下りてみました。


まず目に飛び込んでくるのは、飛騨川が生み出したダイナミックな岩の造形。古生代のチャート層といわれる岩石段丘が広がっています。この姿になるまでに、一体どれほどの長い年月が経っているのでしょうか。


そんなことへ思いを馳せてみると、景色の美しさに感動したり癒されたりする以上に、人の力が到底及ばない自然の大きさに圧倒されるような感覚のほうが強くなってきます。 それは、自然の前で少しだけ背筋が伸びるような感覚といってもいいかもしれません。

 

静かな迫力に包まれながら、飛騨川が刻んだ渓谷美を間近で感じることができました。


* * * 


今回のような控えめな水量で穏やかに流れているときもあれば、大雨の後には、表情を一変させることもあります。 


春は桜、初夏になれば岩ツツジ、盛夏にはテッポウユリが咲き、秋には山一面を彩る紅葉。そして厳しい冬には岩肌を雪が覆い、飛水峡は四季折々の表情を見せてくれます。たびたび訪れて、その変化を楽しむのも良いですね。

飛水峡の近くにあるスポット3選

  • 七宗は「ひちそう」、“しち”じゃなくて“ひち”なのです
  • 地元や飛騨地方の名産品がたくさん並んでいます
  • 国道41号沿い、この看板が目印!

食事に!お土産に!「七宗御殿」


遠見山から飛水峡ロックガーデンへ向かう途中で、ひと休みするなら「七宗御殿」(ひちそうごてん)へ。美濃白川茶の製造を続けてきた明治3年創業の老舗「白川園本舗」が直営するお店です。


店内には美濃白川茶の試飲コーナーやカフェコーナー、テーブル席と座敷席のある広いレストランがあり、ゆっくりと食事やカフェタイムを楽しめます。

 

レストランの反対側には、地元や飛騨地方の名産品がずらり! 旅のお土産探しにもぴったりです。


私はかわいらしいメッセージイラストがプリントされた、美濃白川茶のティーバッグを自分用のお土産に買いました。ティーバックには緑茶と和紅茶があります。美濃白川茶の和紅茶は風味が良くて美味しいおすすめの一品です。

 

七宗御殿は、国道41号沿いの大きな細長い看板が目印です。

  • 宇宙船をイメージした外観

ユニークな「日本最古の石博物館」


なんともユニークなネーミングの「日本最古の石博物館」では、地球の歴史を感じられる貴重な岩石や鉱物を紹介しています。


 実は1970年に、この七宗町で約20億年前の石(片麻岩:へんまがん)が見つかり、つい最近まで「日本最古の石」だったのです。現在は、島根県の津和野町で発見された25億年前の石が日本最古とされています。 


七宗町のマスコットキャラクター、レッキー君とレッキーちゃんがお出迎えしてくれます。

  • 道の駅 ロック・ガーデン ひちそうの外観
  • 建物の下流側にある展望スポットから飛騨川を見下ろせる
  • 白い水しぶきを上げて流れる飛騨川

自然に囲まれた「道の駅 ロック・ガーデン ひちそう」


七宗御殿、日本最古の石博物館に隣接する「道の駅 ロック・ガーデン ひちそう」は、七宗町の特産品や新鮮な野菜を買うことができます。今回の旅は、夏休みの真っ最中ということもあり、野菜の直売所にはキャンプやBBQの買い出しと思われる家族連れでにぎわっていました。


こちらの道の駅でしか販売していない七宗町の地酒「飛酔」(ひすい)は、冷たい甘酒をいただいた平和錦酒造によって造られているのだそうです。


施設の外には、展望台や公園があって飛騨川に沿って気軽に散策できる小道もあります。景色の素晴らしさに歓声を上げる人、愛犬をつれて小道を散歩する人、飛騨川の美しい景色をカメラに収める人、思い思いに過ごしている姿が見られました。


* * *


車窓から何気なく眺めていた飛騨川も、少し足を止めて近くで向き合ってみると、まったく違う表情を見せてくれます。


遠見山からその流れを見下ろし、飛水峡ロックガーデンで岩を削る水の力を間近に感じる――美しいだけではない、長い時間を刻んできた自然の大きさに、思わず背筋が伸びるような旅でした。


下呂温泉や飛騨高山へ向かう途中、少しだけ寄り道して、飛騨川に会いに行ってみませんか。

アクセス

遠見山(川辺町)

車の場合は、東海環状自動車道・美濃加茂ICから国道41号を経由して約10分。平和錦酒造前の町営駐車場を利用できます。

電車ならJR高山本線「下麻生駅」から徒歩約10分。


飛水峡ロックガーデン(七宗町)

車の場合は、東海環状自動車道・美濃加茂ICから国道41号を経由して約20分。遠見山からは約10分。現地に普通車10台分の駐車場があります。

電車ならJR高山本線「上麻生駅」から徒歩約20分。



この記事のレポーター

高橋 尚美
高橋 尚美
愛知に生まれ大学から東京へ。卒業後も都内出版社に勤め、結婚・出産を経て2009年に岐阜へ移住し、その後ライターとして活動。得意分野は、食・子育て・学び・健康・旅・住まい。趣味は歌うこと。岐阜に馴染みすぎて県外出身だと信じてもらえない私。皆さまに岐阜の魅力を「地元民と一緒に歩いてまわる」ようにお伝えします!

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